かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

フランソワ・トリゥフォー監督「大人は判ってくれない」

大人は判ってくれない [DVD]
ringoさんの2006年4月7日のブログトラックバックさせていただきます。映画全体の感じは、ringoさんの感想でわかるようにおもいます。

この映画の少年が行う悪いこと、などは学校をサボる、タバコを吸う、授業中にいたずらをする、という程度。あとでお金に代えたくて、タイプライターを盗みますが、金にならないとわかると、危険を冒してわざわざ返しにいきます。

それでいて、教師からも両親からもうとまれていくのだから気の毒です。小さな理由で級友や家族を殺害してしまう、現在の冷酷な少年犯罪とはまるで別のものですね。映画の少年は、誰ひとり傷つけようとしていません。それなのに、両親の希望で少年鑑別所へ送られます。

映画を見て感じるのは、教師や両親の身勝手さと冷たさでした。生涯自分は一度も不正を働いたことはない、と信じて疑わない教師と、子供は厳格に教育すれば更生できると思い込み、少年鑑別所へ送ってしまう両親(特に母)の無理解が、少年をどんどん窮地に追い込んでしまいます。この映画のもっている人間観察のひんやりするような手触り、惹かれます。

個人的な感想ですが、この少年、映画「バック・ビート」でジョン・レノンを演じたイアン・ハートをもっと子供にしたような顔をしていました。そして、少年の友人もポール・マッカートニーの少年時代のような顔をしていて……。なんだか、少年のジョンとポールが小さな悪事をたくらんでいるような錯覚を感じたりしながら、見ていました。少年の顔、哀れを誘うことなく、たくましくて、だからよけい切ないですね。ringoさんが触れているように、格子のなかで一度だけ涙を流していました。センチメンタルな映画でないだけに印象的なシーンでした。