かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

100日で、100万人が虐殺された恐怖のなかで…

テリー・ジョージ監督『ホテル・ルワンダ

ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション [DVD]

「愛する家族を守りたい。」ただ1つの強い思いが、1200人の命を救った……。

こんな映画のコピーを読むと、甘ったるいヒューマニズム映画を連想しますが、もうすばらしい作品でした。目がスクリーンに釘付け。

外国人から見れば、顔の見分けすらつかない2つの民族。その2つの民族が憎しみを募らせ、相手を軽蔑し、信じがたい大虐殺へ拡大していく。この憎しみと軽蔑の構図は、歴史のなかで、あちこちで見られるような気がします。それにしても、100日で、100万人が虐殺されるなんて想像を絶します。実際、銃や刃物でなぶり殺しにされた死体が累々と道路に連なっていくシーンは壮絶です。ただ『ホテル・ルワンダ』は、そういう残忍さを見せる映画ではありません。


【ストーリー】

時代は1994年。舞台は、アフリカのルワンダ。主人公ポール(ドン・チードル)は、「フツ族」による「ツチ族」の大虐殺がはじまったとき、家族を外国へ避難させようと考えていた。ポールはフツ族だったが、妻のタチアナ(ソフィー・オコネドー)は、ツチ族だったのだ。そのために、以前から彼が支配人をつとめる、高級ホテル「ミル・コリン」を訪れる権力者たちに、毎回賄賂を手渡してある。

しかし、ホテル「ミル・コリン」へ逃げてきたのは、彼の妻と子供たちだけではなかった。孤児院の子供たち、近所の人たち、さらには続々と虐殺から逃れてやってくるツチ族の避難民……さすがに、いくら賄賂をやっても、これだけおおくを助けてもらうわけにはいかない。ポールは、決断しなければならなかった。彼らをホテルから出して、虐殺に目をつぶるか。彼らとともに、運命をともにするか……。

主人公ポールのすばらしい行動力と知恵を、映画は描いています。しかし、いくらあがいても、助けようとする避難民が、1200/100万でしかないことも、見落としていません。大虐殺の規模はそれをはるかに上回っています。だから、スーパー・ヒーローを楽観的に称えた作品ではもちろんありません。

近親憎悪というのか、近い民族同士の確執ほど残虐性をおびるものなのか、なぜこんな恐ろしい事態になってしまうのか、あくまで映画がぼくらに伝えてくるテーマは、こちらにあるとおもいます。

ホテル・ルワンダ サウンド・トラック
「みすみす目の前の虐殺を見殺しにできない」……それからはじまった人助け。ポールは、時には権力者にへつらいながら、困難に向かっていきます。このポール役のドン・チードルと彼の妻タチアナを演じたソフィー・オコネドーがいいです。迫真の演技というのは、こういうのをいうのかな、っておもいました。

あと言い忘れました。映画が終っても席を立たないでください。最後にかかる音楽のすばらしさに感動します。サントラがほしくなりました。



池袋「新文芸座」にて