朝の8時半、お茶の水の会社から飯田橋のギンレイホールまで歩いてみる。本郷をぬけて、壱岐坂をくだって、後楽園の裏をあるく。
東京ドームの裏口をとおるとき、コンサートのあと、ここで会場からクルマで帰るポール・マッカートニーやエリック・クラプトンを待って、見たことを思い出す。
小石川後楽園の入り口を見たら、開園は9時からだった。映画を見てから、あとで寄ることにする。大きな飯田橋の歩道橋をわたるとギンレイホールはすぐだった。
イサベル・コイシェ監督『あなたになら言える秘密のこと』(2005年)
- ●スペイン映画
- ●制作:ペドロ・アルモドバル
- ●出演:サラ・ポーリー、ティム・ロビンス、ハビエル・カマラ
邦題を見れば、『死ぬまでにしたい10のこと』の続編のようにも見えます。きっと邦題は前作の成功にあやかったんでしょうね。監督と女優は同じでしたが、映画の趣きは違いました。しかし、こちらも傑作です。ぼくは、前作以上に感動しました。
ハンナは誰にも言えない秘密を抱え、職場と一人暮らしの部屋を往復するだけの毎日を送っていたが、休暇で訪れた街で、ふとしたきっかけから油田で負傷したジョセフという男を介護することになり……。『死ぬまでにしたしたい10のこと』のコンビが描く痛切な希望と再生に関するドラマ!!
(「ギンレイ通信」vol.99)
見終えてみると、戦争が影をおとすとても深刻な映画でした。心の傷に苦しむサラ・ポーリーと、からだじゅうの火傷(やけど)でほとんど寝たままのティム・ロビンスが対峙して、奥ゆきのあるすばらしい演技をみせてくれます。表情の陰影がこまやかで、俳優というのはすごいなあ、と感心してしまいます。
それから、この監督は音楽の選択がすばらしい。チャンスがあればぜひ見てほしい作品です。
エミリオ・エステヴェス監督『ボビー』(2006年)
- ●アメリカ映画
- ●出演:アンソニー・ホプキンス、デミ・ムーア、シャロン・ストーン
きょうは2本とも当たり!! こちらもよかったです。
1968年6月5日。アメリカ国民の希望、ロバート・ケネディ=通称“ボビー”が凶弾に倒れる16時間前…、現場のL.A.アンバサダー・ホテルには、様々な人種、年齢、階層、境遇に属する22人がいた。悩みを抱える者、秘密を持つ者、疑惑を抱く者、怒りを覚える者、愛が冷めた者、愛に気付いた者、選挙の行方を気にする者…。それぞれの時が交錯しながら時間は流れていく。だが、誰一人として、これから起きる事件を知る由もなかった。60年代のヒットソングを背景に、アメリカ社会を22人の目線で描き出した衝撃のドラマ。
(「シネマ・カフェ」)
登場人物がたくさん出てくるのに、しっかり描きわけられていました。主演は、ニュース・フィルムで登場するロバート・F・ケネディですから、劇映画の部分に、主役らしい主役はありません。なのに、なんと一人一人に存在感のあること。ジム・カヴィーゼル、アンソニー・ホプキンス、デミ・ムーア、シャロン・ストーン、ヘレン・ハント……ベテラン俳優たちの人生を感じさせる演技、見事です。
- 武力の抑圧からは、憎しみしか生まれない。
- 暴力は暴力を呼ぶ。
- 人種はちがっていても、わたしたちは同胞なのだ。
- 力をあわせて、正しい国をつくっていこう。
最後に、以上のようなロバート・F・ケネディの演説が声だけで紹介されます。病んでしまったアメリカの再生を希望する、監督の祈りがきこえてくるようでした。映画は、あきらかに今のアメリカに呼びかけています。聴いていたら、自然に涙がでてきました。