かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

紙屋悦子の青春(2006年)

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昭和20年代そのままに再現された家や、道具たちを背景に、物語はゆっくりゆっくりと進む。無駄な物、贅沢な物が何一つなく、まじめさが評価された時代の人々の美しさを、言葉少なく、描きつくしている。主演は、原田知世小林薫永瀬正敏ら。華やかな演出が何一つない中での、“人間“を演じる技量が光る。質素と言う「日本の美」を、久しぶりに見た作品。

(「goo映画」の解説から)

黒木和雄監督の遺作。とっても静かな映画でした。登場人物は、原田知世永瀬正敏松岡俊介本上まなみ小林薫の5人だけ。舞台は一軒の日本家屋。

昭和20年。この家へ時々訪ねてくる青年(松岡俊介)が暇乞いにやってきますが、それは二度ともどらない戦場へ出かけるおわかれでした。わかれが意味する重さ……。しかし、青年は、淡々とこれまでの恩義を感謝し、去っていきます。

男性が女性が、ひそかに好意をもっていながら、それを言葉に出すことなく、表情で伝えることもなく、静かに不器用に語りあいながらひとときを過ごす……表面はおだやかでありながら、こころのなかはゆれにゆれているわけですね。静かなだけに、濃密です。

恋愛がとても厳粛なものにおもえました。