かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

河瀬直美監督『あん』を見にいく(5月31日)



朝、妻の運転で、西川越の娘のアパートへ双子を見にいく。双子の妹(1歳2カ月)が、つい先日何にもつかまらずに立つようになったという。


きょうも二本足で立って、まわりが「すごいすごい、○○ちゃんすごいね」というと、下の歯を二本見せてうれしそうに笑っていた。


1時間ほど双子と遊ぶ。抱っこしてすぐ近くを通る川越線の電車を見せにいく。電車が通ると、妹の方は、反射的に左手を小さく振って「バイバイ」といった。言葉として成立しているのかどうかわからない。双子の両親が教えこんだのを無意識でなぞっているのかもしれない。というのは、アパートのなかにいて電車が見えなくても、電車のゴーッという音がすると、手を小さく振りながらバイバイ・・・をしているので。



イオン板橋の12時5分からの回が予約してあったので、東武練馬へ河瀬直美監督の『あん』を見にいく。


はじまりまで1時間半ほど時間があったので1階のスターバックスでコーヒーを飲みながら、橋本治著『バカになったか、日本人』を読む。雑誌に書いたのを寄せ集めたもので、本全体がタイトルほどの毒っけを発散しているわけではない。


が、集団的自衛権の行使が閣議決定されようが、原発再稼働をすすめていこうが、おおかたの国民の関心はただ「景気はよくなった?」のひとつだけ。安倍政権の支持率は依然高いままだ。これでは政権に甘く見られても・・・と、そういう失望感にはなっとくしてしまう。



河瀬直美監督の『あん』は、ハンセン病の女性が主人公。50年間ハンセン病の施設「全生園」で「あん」を作り続けてきた女性(樹木希林)が、小さなどら焼き屋へやってきて、アルバイトに雇ってくれるよう頼みこむ。


どら焼き屋の主人(永瀬正敏)は断るが、女性が置いていった「あん」のうまさにびっくりする。それでアルバイトを頼み、朝からの時間をかけた仕込みがはじまる。女性がつくる「あん」のうまさは好評で、開店前から人の列ができるようになるが、まもなく女性がハンセン病の患者だ、という噂が広がって客足が途絶える。ここまでは、予想できる展開ともいえるけれど、この映画の表情が深まりをみせてくるのは、ここからといってもいい・・・。


会話も役者の表情もとても静か。感情の押しつけがない。じわじわ感動が広がってくる。いうまでもなく樹木希林はすごいが、永瀬正敏も内田伽藍もよくて、いい映画を見たなあ、という満足感で映画館を出る。



『あん』公式サイト↓
http://an-movie.com/