かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

三枝健起監督『オリヲン座からの招待状』(2007年)


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先代館主の妻だったトヨと、映写技師の留吉が守ってきた名画座「オリヲン座」が閉館することになり、最後の上映日にゆかりの人々を招待するが……困難を乗越える男女の純愛を描く、浅田文学の人間の「情」が光る感動作!!


(「ギンレイ通信」vol.106から)


気になっていた作品でしたが、見そびれていて、ギンレイホールで、やっと見ることができました。


三丁目の夕日」が、東京の昭和30年代なら、こちらは京都の昭和30年代が舞台になっています。古い町並みに、ちんどんやが登場したり、子供たちが路地で遊んだり、おやじさんが道に縁台を出して涼んでいる風景は、東京も京都もあまり変わらないようです。


乞食のように、無一文でやってきた青年(加瀬亮)が、映画館の館主夫婦の厚意から、そこで働くようになり、館主(宇崎竜童)が亡くなってからも、その奥さん(宮沢りえ)と映画館「オリヲン座」を守っていきます。



世間の目は、「夫の死をいいことに、若い男とよろしくやっている」とか、「館主の妻を<オリヲン座>ごと盗んだ男」と、悪い評判がたちますが、二人は、一線を画しながらも、仲良く年をとってゆきます。


全編に静かなタッチで、宮沢りえ加瀬亮の二人が、感情を秘めながら、年月を重ねていく姿に共感できました。大人の純愛とは、こういうものかな、と感動させてくれるものがありました。


阪東妻三郎が主演した『無法松の一生』は、戦時中のために、無法松が未亡人に秘めた想いを告白するところがカットされてしまいましたが、映画『オリヲン座からの招待状』では、そのことが留吉の心の中を映し出す、間接的な役割を果たしています。


死を目前にした老女トヨ(老いてからは中原ひとみ)に、老人になった留吉(原田義雄)が、はじめて長年秘めてきた想いを告白しますが、もうそこには男女のベタベタした感情ではなく、長年連れ添ってきた<妻>への優しい労わりが感じられて、素直に受けとめることができました。


宮沢りえ加瀬亮がいいです。