二条でNとわかれ、JRバスで高雄へ向かう。バスは山の中にはいると、すいてきた。高山寺(こうざんじ)のある栂ノ尾(とがのお)のバス停でおりたのは、わたしひとりだけ。近くに観光客はほとんどいない。
■高山寺・西明寺・神護寺
案内板にしたがって、高山寺へむかう。きのうの大原より傾斜があるので、ちょっとした山登りになる。
高山寺では、最初に石水院(せきすいいん)へよる。奥の間にはいると、縁側のようなところから眺望がひらける。ここから秋は美しい紅葉を観賞できるのだろうが、いまは枯れ枝ばかりだ。しかし、景観がいいと、枯れ枝も味わいがあるな、とおもう。
ひとり旅の若者が縁側にすわって、山を眺めていた。なかの「鳥獣人物戯画」(複製)や彫像を見てから、若者にならって縁側にすわる。静かで、のんびりしたいい時間だ。いまごろ、Nは妙心寺の特別展を拝観しているのかな、とおもう。
石水院を出るとほとんどひととあわなくなった。山のなかを気持ちよく歩く。寒いので、Tシャツを重ね着した。
【写真】:誰もいない高山寺のなかを歩く
高山寺から西明寺(さいみょうじ)への道は、横を清滝川が流れる。ここの道は下り坂。
西明寺は誰もいないので、拝観料を払わずに本堂の仏像を見てしまった(笑)。やっぱりシーズンオフなんですね。
西明寺から神護寺(じんごじ)への道に高雄観光ホテルがあったが、まるで人の気配がない。
【写真】:この橋を渡って、坂をのぼると西明寺とある
【写真】:西明寺の山門
【写真】:高山寺、西明寺、神護寺への道は、ずっと清滝川が流れている
神護寺までは、ずっと長い石段が続く。途中、年配の女性がへばってすわりこんでいた。連れの男性が上から何か声をかけている。
神護寺では、地蔵院の庭からかわらけ投げができると旅行案内にあったが、みごとにお店がしまっている(笑)。
【訂正】:ぼくは「かわら投げ」と書きましたが、yotarousanがご指摘のとおり、正しくは「かわらけ投げ」でした。訂正だせていただきます。yotarousanありがとうございました。
子どもを3人連れた若い夫婦が、子どもたちに石を投げさせて、それを写真に撮っていた。
しまっているお店の長台を借りて、横になる。気分がいいので、しばらく昼寝をしようとおもったが、太陽がまぶしくて結局眠れなかった。
【写真】:神護寺へは石段が続く
【写真】:神護寺にかわいい犬を発見!(笑)
山城高雄のバス停までも、道が上下している。距離以上にたくさん歩いたような気がする。
午後の時間があまったので、バスで妙心寺へむかう。
■妙心寺を歩く
Nが、妙心寺は、迷子になるほど境内が広く、拝観するところもたくさんあるといっていた。夕方までの残り時間を妙心寺ですごすことにする。説明してくれたNは、午前中に妙心寺へきて、いまはどこかへ移動しているはずだ。
妙心寺北門にある「大力食堂」で定食を食べる。レジで精算するときに、「おおきに」といってくれた。
【写真】:広い妙心寺の境内-1
【写真】:広い妙心寺の境内-2
妙心寺では、最初に麟祥院(りんしょういん)を見る。今回特別公開されている塔頭(たっちゅう)*1だ。
特別公開中の塔頭では、案内・説明してくれるひとがいる。ひとりではさらっと通り過ぎそうな襖絵や庭園の、ゆらいがわかる。襖の水墨画「雲龍図」は、はじめて名前をきく海北友雪(かいほうゆうせつ)のもの。左右の襖に、牡(オス)と牝(メス)の龍が対峙している。
麟祥院を出ると4時だった。特別公開している塔頭は、拝観が4時までなので、もう入れない。通常公開しているところは5時までのようなので、そこを時間があるかぎり見ることにする。
退蔵院(たいぞういん)と桂春院(けいしゅんいん)を拝観した。
退蔵院では、枯れ山水の庭と、室町時代の禅画「瓢鯰図(ひょうねんず)」(複製)を見る。「瓢鯰図」には、「丸くすべすべした瓢箪(ひょうたん)で鯰(なまず)を捺(とら)えるには如何(いかん)」という禅の考案が描かれているとパンフレットにある。
桂春院の門をくぐるともう5時に近かった。女性が生け花をしている。5時に近かったので「終わりですか」と聞くと、「いいですよ」と、入れてくれた。なかは誰もいない。はいっていくと、それまで静かだったが、急に案内の音声が流れた。
帰り、妙心寺は広いので、バス停がどちらかわからなくなり、キャッチボールしている青年に教えてもらった。
バス停からNに電話すると、もう待ち合わせの祇園にいるという。きょうは知恩院と青蓮院(しょうれんいん)のライトアップを見る予定。祇園でバスをおりると、Nは道路をはさんだローソンにいた。
■知恩院山門で狐の嫁入りを見る
八坂神社が改装中だった。そのすぐ近くにある「餃子の王将」で夕飯を食べる。餃子をつまみに生ビールを2杯、レモン・サワーを1杯のむ。
知恩院の庭を見ているうちに、カメラの充電切れの警告が出た。充電するコードを持ってこなかったので、あとは、どれだけ写真が撮れるか。
きのう雄大な清水寺の夜景を見たあとなので、知恩院は地味だった。山門のところで、法然上人の芝居をやっている。
漁師の夫婦が「わたしたち夫婦は長いあいだ、殺生をして生きてきました。死んだら地獄へ行くしかないのでしょうか」ときく。すると、法然上人は「一心に南無阿弥陀仏を称えれば、だれでも極楽へいけます」と教える。「殺生をしてもですか」「仏様は、南無阿弥陀仏を称えるものはすべてお救いになられます」。途中から見たのでよくわからないが、どうもそんな内容の寸劇だ。
【写真】:知恩院山門のライトアップ
【写真】:知恩院山門前から狐の嫁入りがあった。中央の白いのが狐のお嫁さん(笑)
■青蓮院のクスノキにおどろく
青蓮院(しょうれんいん)の前にある楠(くすのき)の壮大な枝ぶりに圧倒される。外に2本、境内にも1本あった。ほかにもあるのかもしれない。特に門前の1本がすごい。枝が縦横に暴れまくっている。この暴れ楠を撮影してみようとしたが、残念ながら電池が切れていた。
【写真】:青蓮院の門前にある楠。もう1本すごいのがあったがカメラの電池が切れて撮れない!
青蓮院の庭は、青い小さな灯りが定期的に点いたり消えたりする。「うわあ、きれい」と、女性の歓声があがる。
外へ出ると、冷えこんでいた。
「仁和寺行きのバスは最終が9時台だから、お酒を飲んでいく時間はないよ」とNにいわれる。
三条京阪まで歩く。バス停近くのコンビニで、お酒と缶詰を買い込んだ。
仁和寺行きのバスはすいていた。
Nが仁和寺東門のベルを押すと、まもなくして男性が門をあけてくれた。仁和寺の境内にある御室会館ってどんなところかとおもったが、民宿のようだった。
お風呂へはいって、缶ビールをのむ。どこからか女性の団体客の笑い声が聞こえてくる。特に同じ女性の、高い笑い声がずっとしている。
500mlの缶ビールを、半分も飲まないうちに眠ってしまった。