かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

吉村公三郎監督『大阪物語』(1957年)

大阪物語 [DVD]


図書館のビデオで見ました。

溝口健二監督が、『西鶴一代女』に次ぐ西鶴ものとして企画をあたためていたのが、他界。その意志を継いで吉村公三郎監督が制作したものと解説にありました。

原作は、溝口健二となっていますが、原点は井原西鶴。人間の業をつきつめていく西鶴のリアリズムが全編に貫かれています。


【概要』

中村鴈次郎と浪花千栄子の夫婦は、年貢を払えず一家で夜逃げ。貧乏ゆえの世間の冷たさを徹底して味わう。

あるときこ米俵からこぼれている米を拾い集めて小銭を蓄え、それをキッカケに、10年経つと、商いに成功する。

商いに成功したが、中村鴈次郎は徹底した守銭奴で、妻の浪花千栄子が死病につかれても、薬代を惜しむ。娘の香川京子に結婚話があっても、利害にしか関心がない。


悋気の極限に達した男を、溝口健二ならどのように描いたのか、興味がわきます。吉村版もおもしろかったのですが、溝口版を見てみたかったとおもいました。


【追記】出演俳優、豪華ですね。悋気(りんき)な商人を演じた中村鴈次郎がなんといっても、存在感では一番です。徹底していやらしくいやらしく……そしてどこか滑稽ですらあります。その妻が「浪花千栄子でございます」の浪花千栄子(笑)。あの関西弁は懐かしいですね。

そして、この映画では、それほど存在を主張していない市川雷蔵、やっぱり二枚目ですよ。彼にメロメロに惚れている香川京子は、美しさの全盛期です。長澤まさみと甲乙つけがたい(笑)。

こういったみどころいっぱいの映画ですが、ただ制作年月が古いために映像が暗く、見にくいのが残念! 今盛んにおこなわれているデジタル・リマスターで洗いなおしたら、もっと見やすくなるのでしょうか。