かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

荻上直子監督『めがね』(上映中)


春。旅人・タエコ(小林聡美)がたどり着いたのは、透明感あふれる日差しと爽やかな風が心地よい海辺の町。渚をゆっくり、ゆっくり歩いた先には、奇妙な懐かしさをたたえた小さな宿が。彼女がそこで出会う人々はみんなどこか風変わりだったり、どこにでもいそうだったり。宿主のユージ(光石研)に、宿にたびたび出没する女・ハルナ(市川実日子)、タエコを追って来る青年・ヨモギ加瀬亮)、そして宿の人々からそこはかとない信頼を寄せられる謎の常連客・サクラ(もたいまさこ)。ゆるやかな時間を思い思いに過ごす彼らは、なぜか全員、めがねをかけている――。『かもめ食堂』の荻上直子監督とスタッフが贈る、南の海辺を舞台にした物語。



(「Cinema Cafe」より)


かもめ食堂』の余波で、『めがね』を見てきました。いま、帰宅したばかりです。


5人の人間と1匹の犬がゆったりと過ごす南の島。『かもめ食堂』同様、話らしい話はなく、間のおおい会話と、ゆるやかに流れるテンポで、映画が進んでいきます。


話は、ひとりの旅行者(小林聡美)が、はじめは戸惑いながら、自然にこの島の極上のゆるやかさになじんでいくまでの物語。



朝はちょっと変わったメルシー体操をして、おいしい食事をして、1日中、何に追われることもなく、海を眺めたり、釣りをしたり、ぼんやりと<たそがれる>人たち。このテンポがとても心地よいのです。


<もっとゆるやかにいきたい>……そんな気持ちを声に出さず、奥にひそめてつくられたのが前作『かもめ食堂』なら、『めがね』は、そのテーマがやや生のまま出すぎているのが気にならなくもないのですが、作品をそこなうほどではなく、この監督のふしぎなペースに惹きこまれて見ていると、とてもいい心持ちでした。


5人の人間のなかにまじって、さりげなく画面に登場する犬のコージ(ケン)も、見逃せません。この犬も十分にたそがれています(笑)。圧巻は、庭で横になって、腹を出しながら昼寝している姿。ringo家のジュリアを思い出しました。


ワーナー・マイカル・シネマズ板橋にて