マルク・ベームのストーリーを、彼とチャールズ・ウッドが脚色、「ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!」のリチャード・レスターが監督したビートルズ映画第二作。撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽監督はジョージ・マーティンで、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが作詞作曲した主題歌『ヘルプ』ほか六曲が挿入されている。出演はビートルズの四人、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリソンのほかに、英国演劇界のベテラン、レオ・マッカーン、舞台・TV出身のエリナー・ブロンなど。製作はウォルター・シェンソン。
(「goo映画」解説より)
DVDの発売により、また見てしまいました。
もう40回、50回、もっと見ているかもしれません(笑)。一番おおく見た映画は『ビートルズがやってくるヤア!ヤア!ヤア!』で、これはもう60回か70回かですが、途中から数えるのもめんどうになりました。
それより『HELP!』は、少ないとおもいますが、2番目にたくさん見ている映画ということは間違いありません。
最初はロード・ショー館に、あとは名画座に、動くビートルズを追いかけて、彼らのいる映画館へ、押しかけました。東京の名画座に詳しくなったのは、ビートルズのおかげです(笑)。
映画『HELP!』の中には、まばゆいばかりのビートルズがいます。
ばかばかしくて、かっこよくて、すばらしい音楽を演奏して……映画の彼らに夢中でした。当時のぼくらが、ビートルズの映画を見るということは、ビートルズのライヴを見る、ということと同じ体験でした。だから、何度でも映画を見て、興奮しました。
コメディ映画として、音楽映画としても、よくできている、といま見てもおもいます。主演がビートルズということをぬきに存在しない映画だとはおもいますが、ギャクの可笑しさは、まったく違和感がありませんでした。
丸顔のカイリー教の教祖も可笑しいですが、当時からぼくが好きなのは、あやしい科学者コンビ。
ひとりは、「ヤア!ヤア!ヤア!」で、テレビ・ディレクター役をやっていた、ビクター・スピネッチ。このひとは、ビートルズ・ファンにはおなじみですね。ただ、もうひとりの太っちょは、好演しているのに、ぼくは今なお、名前を知りません。もしどなたかご存知でしたら、教えてください。
太っちょが、いちいち発明品に使用したパーツの国の違いなどを説明するのですが、その誰に話しているのでもないつぶやきが、可笑しくてたまりませんでした。
もうひとつはビートルズの世話人であるマル・エヴァンスの活躍。氷が爆発してぽっかり穴があくと、すっと海中から出てきて、
「ドーバー海峡はどっち?」(笑)。
ビートルズが指さすと、なんの疑問もなく、また氷の下へ消えていく。びっくりするようなギャクでした。
これは、ご存知のように複線になっていて、最後夏の海で、ビートルズとカイリー教とあやしい科学者たちが、ドタバタを演じていると、またも遠くから彼が泳いでやってきます(笑)。
今度はセリフはきこえないままで、ビートルズが遠くを指差します。すると、マル・エヴァンスは、当然のように海の中、沖へ沖へ、多分ドーバー海峡を求めて泳いでいく(笑)。それだけ。なんとかっこいいギャクでしょうか。
ビートルズが変装して登場するシーンも、感慨深いですね。みんな髭をはやしている。これはリンゴの指輪を狙う、カイリー教やあやしい科学者から身を隠すためですが、この4人の髭面は、2年後の1967年の『サージェント・ペパーズ』のジャケットで、復活します。
この映画の変装シーンで髭をはやし、「おおいいぞ!」と、ビートルズが思ったのかどうか定かではありませんが、2年後の彼らを暗示するシーンとして、黙って見過ごせません。
音楽のプロモ映像の元祖ともいわれる映画ですが、それはもういまさら繰り返す気もありません。きっとそうだとおもいます。ただ、リチャード・レスターの鋭い映像感覚は、まさにビートルズのために存在しているようでした。
この映画は、アメリカにモンキーズという副産物も生みました。しかし、本家のビートルズは、『HELP!』を最後にアイドルをやめてしまいます。
若々しくてかっこいいビートルズを、もっともっと見たい、当時ぼくらはそう思っていたし、きっとまだまだ見られる、と疑いもしませんでしたけど、彼らはすでにアイドルに見切りをつけていました。もうすぐ『ラヴァー・ソウル』が発売されていくんですね。