かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

相米慎二監督『夏の庭』(1994年)



 「台風クラブ」「お引越し」の相米慎二が、湯本香樹実の同名児童小説を映画化したキッズ・ムービー。ワンパクざかりの男の子3人と老人との交流を描いた作品。神戸に住む小学6年生のサッカー仲間、木山諄、河辺、山下の3人は、人が死んだらどうなるかに興味を抱き、きっともうじき死にそうな近所に住む変わり者の老人・傳法喜八を観察することに。初めは子どもたちを邪険に追い払う喜八だったが、次第に優しく接するようになり、彼らとの交流が始まった……。


★(「allcinema ONLINE」から)



相米慎二監督の映画は、むかし『ラブホテル』(1985年)という日活ロマンポルノ作品を1本見ただけ。『ラブホテル』はいい作品でした。主演した速水典子という女優、あれから一度も見ていないけど、どうしているのかな?


『夏の庭』、相米慎二の映画的な特性を知らないまま見ました。


雑草の生い茂る家にひとりぼっちで住む老人(三國連太郎)と少年3人が、いつか次第に心を通わせていくという話。


このシンプルなストーリーを、重厚な三國連太郎と軽快な少年3人の交流のなかに描いています。最初に気づくのは、子供たちがとても自然で、生き生きと描かれているということ。3人の性格的な描きわけも成功しているとおもいました。


「死人を見てみたい」という子供たちの好奇心は、「少年たちが死体を見にいく話」を描いたロブ・ライナー監督『スタンド・バイ・ミー」(1986年)を連想させます。『スタンド・バイ・ミー』も、10代の子供たちを描いた傑作でした。


孤独な老人を訪問し、庭の雑草掃除をする少年たち。それを応援するのは、クラスの女子生徒であったり、担任の美しい女先生(戸田菜穂)であったりします。


クラスの女子生徒たちが食べ物のさしいれをしてくれる厚意をよろこびながら、「おまえらあっち行けよ」と、そっけないそぶりをしてみせる少年たち……小学生の男子生徒ならではの強がり(笑)。


老人が死んである日。少年たちが覗きこんだ井戸から、次々立ち上がってくる蝶やトンボや蛍……。


この幻想的な場面も、不自然な気はしませんでした。あたたかい心をプレゼントしてくれた少年たちへの、老人の感謝を、映像で美しく表現したもの、と見ました。


これを機会に、相米慎二監督の作品をもっと見てみたいとおもいます。


jinkan_mizuhoさんの『夏の庭』の感想は、こちら


jinkan_mizuhoさん、DVDをありがとうございました。すでにringoさんにバケツ・リレーいたしました。


【了】