かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

「新藤兼人95歳・人生との格闘果てず 」



ringoさんから録画したDVDを拝借して、見ました。日ごろ敬愛している監督・脚本家だけに、興味津々でした。久しぶりに、現在の新藤監督の姿を見て、元気とはいえ、年をとられたなあ、という実感も拭えませんでしたが、映画にかける情熱は変わることなく、すごい。


著書のなかでも、インタビューでも、わたしの映画は、「生と性」が主題だと明言し、私の性の相手は乙羽(信子)さんだった、というようなことをさりげなく言っていたり、歯に衣をきせぬものいい、とはこのようなものかな、と新藤兼人の言葉を濁さない<性>への言及も興味深く耳を傾けました。


95歳の映画監督、車椅子にのり、「これが遺作!」と覚悟の上でつくる『花は散れども』は、どのような作品になるのだろう?


柄本明扮する<恩師>が教室で語るセリフを「もっと感情を激しく!」とやり直させる。柄本明が、唾がとんできそうなほど、顔じゅうで熱演すれば、監督はニコニコ満足して、OKを出す。


ぼくなどは、最初の自然に近いセリフの方がいいな、とおもうのだけれど、できあがった作品はどんなものになるのか。


題材から黒澤明の『まあだだよ』を連想させますけど、正直ぼくは『まあだだよ』は、監督がおもしろがっているほどには、おもしろくなくて、これも年齢のせいだろうか、とおもったものでした。


強い思い入れが、そのまま映画の傑作につながるとは限らず、テレビの演出シーンを見ていると、『花は散れども』にも多少の不安を感じます。


とはいえ、95歳の明晰な語り口には、おどろくばかり。彼が遺作と覚悟してつくる映画、いい作品であってほしい、と願っています。