最近立て続けて青春映画の秀作を2本見ました。長澤雅彦監督『青空のゆくえ』と、山下敦弘監督『天然コケッコー』です。高らかな青春謳歌も、大層な挫折もない、両作品とも、慎ましい、自然体の作品。テレビ・ドラマのオーバー・アクションになれている人には、ものたりないかもしれませんが、こういう作品こそ、ぼくは映画的に優れた表現だとおもいます。
■長澤雅彦監督『青空のゆくえ』(2005年)
『青空のゆくえ』は、jinkan_mizuhoさんが、こちらのブログで紹介しているのを見て、見たくなりました。jinkan_mizuhoさんが感想でお書きになっているとおり、出演している女優たちが、それぞれに生きいきとしていて、等身大の高校生を見ている、たのしさがあります。
セリフも、小気味いいですし、ストーリーにも強引さがなくて、最後まで気持ちよくたのしめました。
若い世代って、おとながおもっているほど軽薄でもなんでもなく、心やさしく、節度があって、かっこいいよなあ、とおもいます。
■山下敦弘監督『天然コケッコー』(2007年)
『天然コケッコー』は、tougyouさんの推薦。最近、身近なひとのブログをヒントにして映画を見ることが、ずっと多くなりました。
こちらは島根県僻地の学校が舞台で、全校の生徒が、中学生・小学生あわせて、わずか6人だけ。そこへイケメンの男子中学生が東京から転校してくることで、話が動いていきます。
初恋の動揺が自分自身でわかっていない、素朴な少女のもどかしい心が、瑞々しく描かれています。その少女の心を象徴しているのが島根県の自然の美しさ。主演の夏帆という女優のおさげ髪が、とっても可愛いです。
中学生・小学生……生徒ひとりひとりの自然な愛らしさ。やっぱり山下敦弘監督はいいですね。これは、山下監督作品群のなかでも、『どんてん生活』、『ばかのハコ船』と並ぶ傑作ではないか、とおもいます。
■吉田大八監督『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』も、一風変わっておもしろかったです。女優志願の身勝手な女(佐藤江梨子)が、郷里に帰って、家族のなかに波風を立たせます。
深刻なのかコッケイなのか、わからないところがこの映画のおもしろさだとおもいます。
「演技もろくにできないのに性格の悪い」女優の卵を演じる佐藤江梨子がいいですし、コインロッカーから発見されて孤児院で育てられた、善意の象徴のような女を演じる永作博美が好演しています。
日本映画を話題にするとき、興行成績ばかりに目がいきがちですが、こういう優れた作品が作られていることを、忘れたくないとおもいます。
【了】