かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

松岡錠司監督『さよなら、クロ』(2003年)


さよなら、クロ ~世界一幸せな犬の物語~ スペシャル・エディション [DVD]


シナリオを先に読んで見る。


1960年代の話。飼い主を失った真っ黒な犬が、長野県のある高校へやってくる。犬は、学園祭の仮装行列に<西郷さんの愛犬>として出演し、学校の注目を浴びる。雑種犬だったが、人の心がわかるかのように、賢かった。


用務員室に、用務員さんとともに住みつく。職員も、生徒も、この黒犬を「クロ」と呼んで、愛した。


1960年代の高校生と、1970年代の高校生、二つの世代のクロとの交流が描かれる。つまり、クロは、大切にされ、可愛がられ、この高校で12年を過ごしたのだ。


人間と犬との感情的な交流は抑制されている。クロが特別大きな活躍をするわけではない。それがいいのかもしれない。


クロをめぐる話でありながら、高校生の青春映画だ。過剰なものがないのがいいし、妻夫木聡もいい。高校生のときに芽生えた愛情が、10年の歳月を経て、成就される慎ましさも気持ちがいい。


クロは、大勢のひとたちに見送られて、幸せな生涯を終える。


長野県の高校にあった、実話をもとにした映画のようだ。あたたかい気持ちでいっぱいになれる。