かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

高峰秀子著『にんげん蚤の市』(1997年)/『にんげんのおへそ』(2004年)


にんげんのおへそ (文春文庫)

にんげん蚤の市 (文春文庫)

読んだのもしばらく前で、本ももう図書館に返してしまったので、簡単な感想のメモだけ。


この名女優の抜群の文才は、すでに『わたしの渡世日記』で体験ずみ。はじめて読んだとき、おどろいてしまった。


そして、この比較的最近(本が出た当時のだけど)の身辺を描いたエッセイも、やっぱりおもしろかった。


よくあるように、女優にインタビューして、ライターや記者が文章を起こした<女優のエッセイ>などとは、まるで印象が違う。映画からはうかがうことのできない、というより、まるでイメージのちがう<高峰秀子>が浮かびあがってくる。


本を読んでいると、映画の話題が少ない。読み手がさびしくなるほど、自身の女優としての仕事の蓄積に関心が薄いようだ。


とにかく、早く引退したかった、という。


エッセイのなかには、共演者や映画監督の話題も、まれにしか出てこない。私的な交流もなかったようだ。


以前なにかのインタビューで、
成瀬巳喜男監督から何を学びました?」と聞かれ、
「何も。成瀬さんはしゃべらないもの」
と、答えていたのが強烈だった。


冗談や皮肉でいっているようにはみえない。これが高峰秀子なのだろう。あっけらかんとしたのものだ。


高峰秀子がこよなく愛し畏敬していたのは、梅原龍三郎であり、司馬遼太郎であるという。二人については本のなかでその交遊を楽しそうに描いている。