かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

佐々部清監督『夕凪の街 桜の国』(2007年)


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被爆体験を、静かに描いた映画で、いい作品でした。以前、jinkan_mizuhoさんが、こちらのブログで書かれているのを見て、ずっと見たいとおもっていましたが、やっと見ることができました。


広島で原爆を体験した世代と、またその子供たちの世代とを、二編にわかれて描いています。


「夕凪の街」は、26歳のミナミを麻生久美子が好演。ミナミは、原爆投下のときは、奇跡的に助かったのに、それから13年後原爆病で亡くなってしまいます。生き延びたことを、亡くなった多くのひとたちに申し訳なく思いながら、しかし結局、彼女も長く生きることはかないませんでした。


「桜の国」は現代。麻生久美子の、弟家族のものがたりが描かれています。


父(堺正章 )は、広島にいなかったため、被爆をしないで、戦後を迎えることができました。しかし、彼の心のなかには、姉のミナミや妻の死(原爆病とは確定できないが、映画を見る限りそうとしか考えられない)の悲しみが、しこりのように残っています。


その父の不審な行動を追うなかで、ナナミ(田中麗奈)は、父や母や、むかし亡くなった伯母の、被爆体験の悲しみを知っていくのですが、現代の女性らしい、明るい田中麗奈がよくて、それが逆に悲しみを深くします。


原爆をテーマにすると、どうしても眼をそむけたくなってしまいますが、この映画なら現代の若い男性や女性でも見られるのではないか、とおもいました。視点を現代においているのも、共感を得られやすいとおもいました。


原作は、こうの史代というひとのマンガだそうです。中沢啓治の「はだしのゲン」は強烈な感動を受けましたが、こちらはじわじわと感動がおそってきます。