かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

広津和郎の「散文精神について」


10代から、小説を読むのは好きでも、評論や批評のようなものは、あまり読まなかった。難解な表現が苦手で、読んでもわからなかった、ともいえるけど(笑)。


広津和郎の「散文の精神」は稀な例外で、書かれている意味が、ストレートに伝わってきた。

それはどんな事があってもめげずに、忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、楽観もせず、行き通して行く精神──それが散文精神だと思います。それはすぐ得意になったりするような、そんなものであってはならない。


と同時にこの国の薄暗さを見て、直ぐ悲観したり滅入ったりする精神であってもならない。そうではなくて、それは何処までも忍耐して行く精神であります。アンチ文化の跳梁に対して音を上げず、何処までも忍耐して、執念深く生き通して行こうという精神であります。じっと我慢して冷静に、見なければならないものは決して見のがさずに、そして見なければならないものに慴えたり、戦慄したり、眼を蔽うたりしないで、何処までもそれを見つめながら、堪え堪えて生きて行こうという精神であります。


解釈する必要もないほど、明解なメッセージだが、わたしの場合でいえば、「みだりに悲観もせず、楽観もせず」・・・曇りなき眼でものを見ることは、これまで、なかなかむずかしかった。