著者の読み方は、藤木TDC(フジキ・ティーディーシー)。
カバーの裏側に、こんな解説が載っている。
繁華街でも商店街でもない場所にぽつんとある鄙びた酒場。破れた赤提灯、すすけた暖簾、汚れた引き戸。一見客を突き放す閉鎖的な空気を漂わせている。
(省略)
場末の酒場には、酒徒の好奇心を満足させる物語と流儀がある。日常のしがらみに疲れた人間を癒す、酒飲み心の原風景とは。
酒場の案内本ではなくて、戦後の場末にできた酒場の歴史と、そこへ集まってくる酒飲みの精神風景について書かれた本。
街の小さな横道へはいると、狭苦しいほど居酒屋やスナックが立ち並んでいる横丁がある。少し心が臆するけれど、勇気をだして、なかの一軒へ、はいってみる。
そんな、うらぶれた風景や酒場に心を惹かれるのはなぜなのか。
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著者は、場末の酒場へ情緒を求める。場末の酒場で、そこの店主やママさんとの会話を楽しむ。
時には見知らぬひとたちにまじって、カラオケを歌うことも。
わたしは、情緒的なことよりも、先に料金の安さと肴の豊富さを見てしまう(笑)。それに、ほとんど自分からは、会話をしない。
そして、カラオケのあるお店には、ひとりで、はいらない。
そんな場末の酒場に求めるものに、著者とのちがいがあるけれど、共感するところも少なくなかった。