ひとつは、貴田庄著『原節子物語 若き日々』。
- 作者: 貴田庄
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/03/07
- メディア: 文庫
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山中貞雄監督の『河内山宗俊』は、山中貞雄監督で現在フィルムが残っている3本、悲劇の傑作『人情紙風船』、粋でおもしろい『丹下左膳余話 百万輌の壺』に比べると、映画的にはすこしものたりない気がするけれど、16歳の原節子が見られるので貴重。
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2004/12/25
- メディア: DVD
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アーノルド・ファンク監督の『新しい土』は、もともと同盟国の日本の魅力をドイツ人に紹介するための目的でつくられた映画。日本人が見ると、かなり変だ。東京の近郊にあるはずの原節子の家なのに、庭から外へ出ていくと、宮島のあの大鳥居が見えてきたり(笑)、東京の夜のはずなのに「阪神電車」のネオンがまたたいたりして、おどろかされる。スジよりも日本の美しい風景に力点が置かれている。そして、その風景以上に美しいのが17歳の原節子。初々しい原節子に、日本人もドイツ人も魅了されて、映画は大ヒットした、という。
- 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
- 発売日: 2009/04/24
- メディア: DVD
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「新しき土」予告篇↓
https://www.youtube.com/watch?v=hQ0Xp9Qr_sU
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石井妙子著『原節子の真実』は、本格的な伝記で、読み応え十分。内容も、いままで知らなかった視点や事実が書かれていて、新鮮だった。
- 作者: 石井妙子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/03/28
- メディア: 単行本
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- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2015/02/18
- メディア: DVD
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この伝記では、噂の小津安二郎との恋愛も、やんわり否定されている。というより、もっと他の恋愛相手との事実に、作者は筆を割いているので、ここは興味深い。簡単にいえば、その男性は無名(といっても、著者はおもわせぶりではなく、実名をあげている)で、原節子という人気女優との釣り合わない恋愛に、身をひくことになる悲恋のストーリーなのだが・・・。
原節子の伝記を読んでいつも心にひっかかるのが、彼女の義兄熊谷久虎監督。終始彼女に強い影響力をもち、原節子はこの義兄を尊敬していたようだ。石井妙子は、この義兄と原節子とのあいだに、親族以上の関係があったのではという噂も紹介している。例えば、成瀬巳喜男作品などにかかわった東宝のプロデューサー藤本真澄は、原節子と結婚したかったが、義兄との関係を知ってあきらめた、そんなエピソードが紹介されている。
これがほんとうならば、彼女が結婚しなかった大きな原因のひとつ、となるのかもしれないが、著者は、わからないことはわからないままで、それ以上の憶測はしていない。そのせいかもしれないが、この伝記に下世話な感じはぜんぜんない。