かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

降旗康男監督『あなたへ』(公開中)


9月1日、赤羽の立呑み「いこい」で飲んでから、川越駅で家人と待ち合わせる。家人の運転で「ウニクス南古谷」へ。


降旗康男監督『あなたへ』(主演高倉健)を見る。



北陸の刑務所に指導技官として勤務する倉島英二は、亡くなった最愛の妻・洋子が生前にしたためた1通の絵手紙を受け取る。そこには「故郷の海に散骨してほしい」と書かれてあった。


英二は洋子が生前には語らなかったその真意を知るため、キャンピングカーに乗り彼女の故郷・九州へと向かう。その道中で出会うさまざまな人々。彼らと交流し、悩みや思いに触れていくうちに、妻との何気ない日常の記憶が蘇ってくる。


(「goo映画」の解説より


若いときの高倉健の映画は、見たことがない。ヤクザ映画が苦手だったので、敬遠していた。はじめて見たのは、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)だったかもしれない。しかし、この作品も予定調和の作品だった。


どういう役柄を、高倉健がどのように演じるか、というのではなく、どの映画でも、高倉健は、高倉健を演じているようにみえる。最後が予測されてしまうので、長い間、「見たい」という意欲がわかなかった。


それが、 チャン・イーモウ監督『単騎、千里を走る。』(2006年)を見てから、高倉健の年齢を重ねたシワの多い寡黙な表情がいい、とおもうようになった。


単騎、千里を走る。』は、息子の足跡をたどるロード・ムービーだったが、『あなたへ』も、亡くなった妻の故郷を訪ねる、旅を描いた映画でした。




『あなたへ』の、無口で誠実な主人公は、高倉健そのもののイメージ。刑務所の指導技官らしくなく、旅先で誰とあっても謙虚で腰が低い。出会うひとびとが、そんな主人公に厚意をもつ。


誰でも、こんなひとに出会ったら好感をもって当然・・・そういう魅力が高倉健の演じる主人公にはあるが、自然でいい。


脇役のビートたけし佐藤浩市余貴美子はいいけれど、想い出の感傷的な場面ばかりで登場する田中裕子の出し方は、もったない。田中裕子は、こんな感傷的な役柄でないほうが、おもしろい女優だ、とおもう。