1月27日、土曜日。「新宿武蔵野館」へ、竹下昌男監督の『ミッドナイト・バス』を見にいく。
新潟と東京を行き来する深夜高速バスの運転手を主人公に、バラバラになっていた家族の再出発を描いた人間ドラマ。
長距離夜行バスの運転手・高宮利一が運転するバスに、16年前に別れた妻・美雪が偶然、客として乗車してくる。美雪は、怪我をした父の面倒を見るため東京から新潟へ通っているという。また、利一と美雪の息子・怜司と娘・彩菜も、それぞれの理由で故郷の新潟で過ごす時間が増えていた。図らずも新潟で時を過ごすことが増えた元家族の4人は、それぞれの心に向き合うこととなる。
(「映画.com」より)
http://eiga.com/movie/86608/
バラバラになった家族が偶然再会。もう一度それぞれの過去を見つめ直すことになる。感傷的な盛り上げを避け、とてもていねいにつくられた作品。
元妻・美雪にも、子供たちにも、東京の恋人・志穂にも、優しく接する原田泰三演じる主人公・利一がいい。主人公がニュートラルなので、元妻・美雪、子供たち、東京の恋人・志穂、・・・それぞれの心の奥が少しずつ見えてくる。急激でなく、157分という上映時間をかけて、だんだんに見えてくる。
新潟と東京を行き来する深夜バス、という設定もいいな。主人公・利一にとっては仕事だが、ほかの乗客はいろいろな事情があって、このバスに乗ってくる。
利一の元妻・美雪(山本未来)は、故郷に残した父が入院したために、深夜バスで新潟へもどってくる。妻の父・山辺敬三(長塚京三)は、利一の義理の父であり、子供たち=彩奈(葵わかな)、怜司(七瀬公)にとっては祖父。祖父がこの一度は分散した家族を再結集させる導き手になっている。この誰にも優しかったとおもわれる祖父がいなかったら、家族の再会はもっと淡々とおわってしまったかもしれない。
しかし、「覆水盆に帰らず」で、いちど分散した家族が、むかしのままに戻るのはむずかしい。映画をみていて、あるいはこの夫婦はもう一度やり直せるのでは、とおもわなくもないけれど、元妻の美雪には、新しい夫も子供もいる。別々に過ごしてきた時間というものは、そういうものなのだ、と教えてくれる。
この映画、登場人物のひとりひとりがきちんと描きわけられていて、とても魅力的。子供たち=彩奈(あやな)も、玲司(れいじ)も、しっかりと存在している。
東京の恋人・志穂(小西真奈美)も、愛おしく描かれている。彼女の前から消えようとする利一に、「ひとりにしないで」と声をふりしぼってせがむシーンは、もらい泣きしてしまった。小西真奈美の可憐な美しさが、あとあとまで消えない。
誰だって、こんな恋人がいたらいいな、と、利一がうらやましくなる(笑)。
上映後、監督・出演者の初日舞台挨拶がある。主要なキャストは、彩奈役の葵わかなをのぞいて出席。たのしい映画のオマケだった。
それにしても、こんなしっとりとしたいい映画が、都内で2箇所しか上映されていないなんて、もったいなさすぎる。見て、後悔しない作品ですよ。
『ミッドナイト・バス』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=jmRrAFALo4E
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帰り、映画館近くの居酒屋のランチを食べて、ホッピーを飲む。あまり落ち着かないお店。お酒やつまみを追加しようとおもいながらやめて、アパートへ向かう。