アニメーション映画が苦手で、宮崎駿作品をちゃんと見るのも初めて。予告編を見て、この作品は見たくなった。大正・昭和の日本の歴史がどのようにストーリーにからむのか、興味があった。
アニメーションで描かれる人物は、マンガのラインそのものなのに、背景や風景は、リアルに細かく描かれていて美しい。マンガと絵画の中間くらいを見ているような気持ちになる。
主人公とその恋人、仕事仲間や上司の関係は、へんな誇張がなく、淡々と描かれていて、心地よかった。
飛行機が大好きな少年が、その夢を広げて、設計者になる。その夢の過程を追っていく。実在の人物、堀越二郎がモデルで、この作品のなかでも、そのままの名前で登場する。
しかし、堀越二郎が優れた才能を駆使して作り上げた飛行機は、戦闘機であり、戦時下のなかでは、殺戮の道具でしかない。
その夢と現実の相克に悩む主人公の姿は描かれない。夢の飛行機を作り上げることと、それが戦闘機として使用されることとは切り離して考えられる、ということなのだろうか。
この作品は、関東大震災の様子はある程度リアルに描かれるが、第二次大戦の戦争は幻想のなかでしか登場しない。美しい作品だとおもいながら、なぜかスッキリしない気持ちが残る。
といいながらも、アニメーションへのアレルギー反応が起こることなく、気持ちよく最後まで見れたのだから、きっと、こういうタッチの作品が好きなのだろう。