かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

朝原雄三監督『愛を積むひと』を見る(6月21日)


6月21日の朝、ジョナサンで朝飯をすませ、妻の運転で上福岡にある日帰り温泉の朝風呂へいく。


「ウニクス南古谷」で、9時35分から朝原雄三監督の『愛を積むひと』をネット予約してあったので、風呂を40分ほどで出て、映画館へ向かう。せわしない午前中だ(笑)。




『愛を積むひと』の原作は、エドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積む人」だ、というのは映画を見てから妻に教えられた。


夫婦は、長年借金で苦労した工場をたたむ。工場を売り払った残りのお金をもって、夫婦は北海道へやってくる。


妻の希望もあって、ここで余生をのんびり暮らすつもりだ。しかし、仕事を辞めた夫は手持ち無沙汰の日々を過ごしている。


そんな夫に、妻は「あなたの手で石垣の塀をつくってよ」、という。めんどうで気がすすまないが、夫は妻の希望をきき、アルバイトの青年を雇い、いっしょに石を運び、石垣を積みはじめる。


妻はずっと体調が悪く、医者から心臓の移植手術を受けなければ治癒するのはむずかしい、と宣告される。見かけよりも気の小さい夫が、それを知ればどれほど動揺するかしれない、と妻は夫に病気のことを話さない。


そして、ひとりになった夫の、その後の人生のことを思案しながら、静かに自分の死の準備をしていく。


妻が亡くなってから、夫は、家のなかで、妻が書き遺した手紙を見つける。1通、2通、3通、と出てくる。


「篤ちゃんへ」と綴られた妻の手紙が、妻を失って何も手がつかず、廃人のように家のなかで茫然としている夫を、少しずつ日常へもどしていく。


夫は、再び石垣を積みはじめて、完成させる。



川本三郎さんがご自身の奥さんが亡くなられたときの心痛を書いた本、『いまも、君を想う』を読んだときもそうだけど、こういう妻に先立たれる映画や本を読むと、身につまされるものがある。こういう状況になったら自分はどうなるのだろう、とおもいながら見てしまう。


ストーリーがセンチメンタルかも、という不安もあったが、やっぱり佐藤浩市がいい。白髪の初老の夫を演じていたけれど、実年齢よりも老け役ではないのか。抑制のきいた演技に見入ってしまった。


帰り、「野草庵」という昼でも飲める、個室の食事兼居酒屋へいく。妻は、「映画まあまあかな?」といったが、「そうかな。けっこうよかったよ。佐藤浩市がよかった」というと、自分で映画を選んだ手前か、「きみがよかったのならいいけどね」と妻はいった。



『愛を積むひと』予告編↓
http://d.hatena.ne.jp/beatle001/draft?epoch=1435028213