高井有一著『この国の空』を読む。

この国の空 (新潮文庫)

荒井晴彦監督、二階堂ふみ主演の映画『この国の空』の原作（タイトルは同名）を、電子書籍で読む。二階堂ふみの演じた里子がよかったので、原作も確認してみたくなった。

＜映画の感想は、こちら＞

★

昭和20年。すでに敗戦は濃厚で、連日空襲が続く日々。そんななかで、19歳の里子は、女性の「なにをしていても綺麗な年頃」を迎えていたが、里子を女性として意識させてくれる同年代の若い男性が近くにいない。唯一近くにいる男性らしい男性は、妻子を故郷に疎開させた市毛という銀行員だけ。

里子は、思春期の強い性欲に押されるように、その市毛に惹かれていく。空襲でいつ死ぬかわからない恐怖のなかで、里子は市毛への思慕を抑えられなくなっていく。

戦時下に、庶民がどのように過ごしていたかがリアルで読み応えがあった。映画は二階堂ふみが抜群だったが、描写の綿密さは、映画より小説のほうが濃い。原作を読んでよかった。