このブログで(ダイアリー時代かな?)は、なんどかボブ・ディランのライヴのアレンジが年代とともに変化していくことについて書いています。過去の名曲がまるで新しい曲のように更新されていく。今回の「フジロック」でのライヴも、そうでした。
ボブ・ディランのライヴがいつも新鮮なのは、どんな伝説的な名曲も容赦なくアレンジが一新され、ボブ・ディランの現在の感覚のなかに昇華され、新しい装いで再生されるから。そんなボブのライヴにずっと魅了されています。
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YouTubeで、1曲をとりあげてその変化をたどってみました。あとで自分でたのしむのに便利だから、という利己的な動機ですが、ここに整理しておきます(笑)。
例にあげるのは、「One Too Many Mornings」(「いつもの朝に」という邦題もある)。オリジナルは、アルバム『時代は変わる』(1964年)に収録されています。
歌詞の内容は、こんな感じ。
「ひとつだけ多すぎる朝」
通りでイヌがほえていて
一日はだんだん暮れていく
夜がだんだんおちこんでくると
イヌはほえなくなるだろう
そしてしずかな夜はくだけ散るだろう
ぼくの頭のなかの音で
というのも ぼくはひとつだけ多すぎる朝
と 一千マイルをうしろにしてきたので
ドアのまえの十字路から
ぼくの目はうすれはじめる
ふりむいて 恋人とねた
部屋を見ようとするとき
それで また通りへ目をもどす
歩道と看板が見える
それで ぼくはひとつだけ多すぎる朝
と 一千マイルをうしろにしてきたのだった
それはいらいらした満たされない気持で
だれにもなんのいいこともない
ぼくがいうことはなんでも
きみはおなじくうまくいえる
きみの立場からきみは正しい
ぼくの立場からぼくは正しい
ふたりともあまりに多くの朝
と 一千マイルをうしろにしてきた
「ボブ・ディラン全詩 302篇 LYRICS 1962-1985」
ボブ・ディラン全詩302篇―LYRICS 1962‐1985
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まずは、オリジナル録音。
それが1966年、アコスティック・ギターからエレクトリック・ギターに持ちかえて歌うと、次のように変化していきます。おそらくイギリス・ツアーの映像ではないか、とおもわれます。車に、ジョン・レノンがいます。
このイギリス・ツアーでは、アコスティック・ギターをエレキ・ギターに持ちかえたディランに客席から激しいブーイングが起こり、「裏切りもの!」「ユダ!」の罵声がとんだ。バンド・メンバーのリヴォン・ヘルム(のちのザ・バンドのドラマー)は、激しいヤジがいやになってツアーから離脱した、といいますから、ブーイングのすごさが想像できます(のちにリヴォン・ヘルムは再びツアーに合流)。
しかし、ディランは、その後のツアーもロック・サウンドを強行していきます(二部構成で、アコスティック・ギターの弾きかたりもやっているのですが、それでもフォーク・ファンには許容されなかったんですね)。
Dylan, Lennon and One Too Many
Mornings
ボブは、1969年しわがれ声を封印して、きれいに澄んだ声で、アルバム『ナッシュビル・スカイライン』を発表して、ファンをおどろかせました。わたしもレコードを買って、リアルタイムで体験したおどろきです。
そのときに、カントリー・シンガーの大御所・ジョニー・キャッシュと1曲だけ「北国の少女(Girl from the North Country)」を共演して、アルバムに収録しています。この映像をみると、そのときに「One Too Many Mornings」も演奏していたようですが、アルバムには未収録で、YouTubeで見るまで知りませんでした。映像と音源をアップしてくださったひとに感謝です! ジョニー・キャッシュの色合いが濃厚で、カントリー風味の「One Too Many Mornings」。
bob dylan & johnny cash - one too many mornings
ボブは、1975年の暮れと1976年の春、2回にわたって「ローリング・サンダー・レヴュー」と銘うったアメリカ・ツアーを敢行。次の映像は、後半の1976年のほうです。
音源はライヴ・アルバム『ハードレイン』というタイトルで発表されました。しかも、当時コンサートの一部がテレビ放映されたんです!
日本ではじめて動くボブ・ディランがテレビに登場。わたしはまだビデオデッキを持っていないのに、電気屋さんの息子にたのんでビデオ録画してもらいました。まだVHSが出まわる前で、大きなカセットに録画してもらい、その後VHSの安いビデオデッキが売られるようになってからデッキを買い、VHSに変換してもらい、なんどもなんども再生してみた記念のコンサート映像です。ここでの力強い「One Too Many Mornings」には圧倒されました。
Bob Dylan - One Too Many Mornings
ボブ・ディランは、その後も「One Too Many Mornings」をライヴで演奏していますが、残念ながら日本公演では一度も演奏されていないようです(「ようです」というのは、ボブ・ディランは日替りでセットリストを変えることがあるので、わたしが観ていない日に演奏した可能性があるからです)。
一度ライヴで、自分の目で体感したいボブ・ディランの1曲です。