11月16日、土曜日。
「新宿ピカデリー」へ、朝9時から上映の森達也監督の『iー新聞記者ドキュメントー』を見にいく。
藤井道人監督『新聞記者』を企画した河村光庸(かわむら・みつのぶ)プロデューサーが仕掛ける「新聞記者」第2弾。
こういういま社会で起こっている問題をまっこう勝負で扱う映画が日本でつくられるようになったのは、前提としてとにかくうれしい。
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今回はフィクションではなく、東京新聞社会部・望月衣塑子記者を追ったドキュメンタリー作品。
森友・加計問題
伊藤詩織さんの準レイプ容疑者の逮捕中止事件
前川喜平さんの「あったことをなかったことにはできない」といわしめた証拠文書の隠蔽問題
この数年話題になったこういった事件を追っていく望月衣塑子記者の姿をカメラがとらえていく。
取材対象に向かっていく望月記者の姿は、圧倒されるようなパワーに満ちあふれている。
取材現場だけでなく、移動中、キャリーケースをころがして歩く姿、車の中から子供に電話する母親としての姿、も描かれる。
記事掲載の問題だろうか、会社の上司(?)に電話で抗議しているシーンも、迫力があった。
まさに忖度しないひと。
菅官房長官の記者会見に森達也監督は出席して、望月記者が質問をするところを撮りたかったというが、これは警備している警察にはばまれてなかへはいれない。そういう森達也監督の姿も映る。
この菅官房長官の定例会見で、望月記者は広く知られるようになったのだから、監督としては当然の要望だったろう。
菅官房長官への立て続けての質問で、注目を浴びた望月衣塑子記者は、声が大きいので、Youtubeで見ていて、記者席は映らないのに、あっ望月記者だ、とすぐわかった。
顔よりも声で、彼女を覚えてしまった。
朝日新聞の南彰(みなみ・あきら)記者も、望月記者を援護するように菅官房長官へ望月記者の質問に連続して食い下がる。もうひとりジャパンタイムスの吉田玲慈記者も、孤軍奮闘する望月記者の質問に質問を重ねた。
望月記者の権力におもねることのない鋭い質問の連続は、迫力があり、誠意のないのらりくらりの菅官房長官をしばしば追い詰め、わたしは、こころのなかで拍手をおくらないでいられなかった。
菅官房長官の定例会見は、この3人がいつも鋭い質問で迫った。中心は、望月記者だった。声もいちばん大きかった(笑)。
まもなく、菅官房長官は望月記者に質問回数を制限したり、隣りにいる補佐官(?)が、質問途中で声を出して妨害するようになった。
しかし、彼女はひるまない、と見えたが、ほんとうは質問がやりにくくて、会社へ質問妨害に抗議してくれるよう依頼しているシーンも出てくる。
素朴になぜほかの記者がそろって質問妨害に抗議しないのだろうか、とおもったこともあるけれど、記者クラブ制度の実情を読み聞きすると、それは期待できないことがわかった。
このへんのところは、取材に立ちあえなかったこともあり、森達也監督は、公けの映像に、菅官房長官と望月記者の声をかぶせて、両者の攻防を描いている。
ここがもっとリアルに描くことができたらとおもわないでもなかったけれど、取材ができないのだからしかたがない。
上映時間113分。長く感じられなかった。
そして予想していたとおり、被写体としての望月衣塑子記者は、とても魅力的だった。
★
朝9時から早起きしていったひとつの要素は、舞台挨拶が付いていたから。
森達也監督と望月衣塑子記者が、映画についてのインタビューを受けて想いを語った。
客席からタブレットで撮ったピンボケの写真(笑)。
口数の少ない森達也監督の無愛想とも思える対応と、望月衣塑子記者の話し出すとあとからあとから言葉があふれてくる対応が対照的で、おもしろかった。