映画『男と女 人生最良の日々』。
2月1日、土曜日。晴れ。
渋谷、Bunkamuraへクロード・ルルーシュ監督の『男と女 人生最良の日々』を見にいく。
少し早く着いたので、近くのコーヒー店で、小休止。30分ほど、電子書籍で、近衛龍春『織田信忠』を読む。
もともと分量の多い小説なうえに、ほかの本に心を移していたから、なかなか読み終わらない。現在、武田勝頼の敗走にまでやっときた(武田家滅亡の前夜)。
戦国時代、いってみれば殺し合いの時代。こんな時代に生まれなくてよかった、と中学生みたいなことを考える(笑)。
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午後1時35分から『男と女 人生最良の日々』はじまる。
映画『男と女』予告編
前作『男と女』がデジタル・リマスターされて再上映されたときの予告編。
あれから53年…『男と女 人生最良の日々』予告編
新作『男と女 人生最良の日々』予告編。
フランスの名匠クロード・ルルーシュ監督が1966年に手がけ、第19回カンヌ国際映画祭パルムドールとアカデミー外国語映画賞、脚本賞を受賞した名作恋愛映画「男と女」のスタッフ&キャストが再結集した続編。前作の主演アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンが同じ役柄を演じ、53年後の2人の物語を過去の映像を散りばめつつ描いた。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/91301/
1966年といえば、ビートルズが武道館で来日公演をした年。わたしは高校の2年。頭の中はビートルズに占領されていた。
前作『男と女』は、こんなむかしに作られた作品。17歳のわたしはビートルズでいっぱいの日々だった。この映画はもっとあとに、たぶん名画座で見たのかもしれない。
前作は、フランス映画を代表するような名作。上映後、席をすぐに立てないほど、強い感動を受けた。
男も女も、それほど若いわけではない。子供を寄宿舎に預けるときに、ふたりは出会う。すでに子供がいる男女の恋愛だった。
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今回は、そのふたりが、人生の晩年になって再会する。
むかしカー・レーサーだったジャン・ルイ(俳優:ジャン=ルイ・トランティニャン、ちなみにわたしはいまでもこの俳優の名前をちゃんといえない)は、老人施設で暮らしている。痴呆もはいっているようで、息子がいるのかいないのか、意識が混濁している。彼の頭の中は、むかし別れた女性、アンヌ(アヌーク・エーメ)のことでいっぱい。想い出話は、その女性のことばかり。
アンヌのところへ、ジャン・ルイの息子が訪ねてくる。「父の状態があまりよくない。あなたのことばかり話している。1度会ってもらえないか」という。
ジャン・ルイとアンヌが別れた原因は、ジャン・ルイの浮気だった。それから長い時間が流れた。
アンヌは、迷ったすえ、ジャン・ルイのいる老人施設を訪ねていく。物語は、ここからすばらしい展開を見せていく。
忘れられないフランシス・レイの音楽「男と女」が映像にかぶってくると、涙が出てきそうになる。
意識が半分混濁している老人と、むかし恋仲だった女の会話が粋なのだ。
こんなアクロバットな会話を創造できるクロード・ルルーシュは、82歳。なんて瑞々しい感性だろう。
続編におもしろいものなし、という見方もあるけれど、この映画にはあてはまらない。むかしを知るほどに、味わいが増してくる。ふたりが、別れてから過ごしてきた空白の年月までがスクリーンに滲んでくる。
若くてかっこよかったジャン・ルイときれいだったアンヌ。
いまは、ふたりともシワがふえ、老人になってしまった。しかし、ふたりが会話を重ねると美しい過去がよみがえる。
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山田洋次監督『男はつらいよ お帰り寅さん』と構造はにている。同じ俳優が50年の歳月を経て、同じ役を演じるというどちらも奇跡のような作品。
むかし見た、名作『男と女』の感動が壊されるのでは、と見るのをためらうひとがいるかもしれない。
でも、大丈夫ですよ(笑)。
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映画が終わってから、Bunkamura近くの居酒屋「磯丸水産」で、RIEさんと「サシ(1対1)」の飲み会。RIEさんは先にきて、店の前で立っていた。
いつもは、3人もしくは4人で集合することが多いけれど、たまにはふたりで飲もうということに。
午後3時半ころからたぶん10時ころまで、場所も変えず、飲んで話した。ひさしぶりに、一人のひとと長い会話をしたような気がする。