11月15日、日曜日。快晴。
午後1時50分からはじまる、桜木紫乃原作、武正晴監督、波瑠主演『ホテルローヤル』を見にいく。
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内容は、釧路にあるラブホテルの盛衰。
主人公雅代(波瑠)の両親が希望をいだいて開業した「ホテルローヤル」も、年月とともに古び、閉業に追い込まれていく。
受験に失敗した雅代は、「ホテルローヤル」の仕事を手伝い、そこを訪れるさまざまな人生を見る。
映画で描かれる来客のエピソード。
「ホテルローヤル」は、親や子どものいる狭い自宅では、自然に甘え合うことのできない夫婦にとって憩いの場であり、ふたりはここではおもいっきり男と女になる。
高校教師と彼が担任する女子高生は、教師と女子高生の恋人関係ではなく、妻に逃げられた夫と両親から捨てられた女子高生としてやってくる。ふたりはそれぞれに深く傷ついていて、心中する。
女子高生を演じる伊藤沙莉(いとう・さいり)という女優がいい。また興味をそそる若手女優をひとり発見した気がする(笑)。
雅代の母(夏川結衣)は、恋人をつくり家を出ていってしまう。開業に燃えていた父(安田顕)もいまは、仕事に身がはいらない。ふたりの従業員と雅代がホテルの実務を支えている。
しかし、ホテルに心中があったことで客足は遠のく。雅代は閉業を決意する。
雅代が去ると、「ホテルローヤル」の建物は空き家になる。
その封鎖された空き家のなかに侵入するカップルがある。彼らは、廃墟でヌード写真を撮って、雑誌に投稿することがねらいのカップルだった。
映画は、時間軸を逆転させ、この廃墟でヌードを撮るカップルの登場からはじまる。
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若い女性がモーテルの仕事をする、のは、いろいろな羞恥がともなうだろう、とは想像できる。だからか、雅代を演じる波瑠は、ほとんど無表情で、感情をおもてに出さない。
性に対する想像だけが広がるが、雅代はじっさいの性体験はない。ホテルの閉業を決断してから、はじめてひそかに淡い恋心をいだいていた宮川(松山ケンイチ)を誘ってみるけれど、途中で宮川は家族を裏切れない、と断る。
雅代のいだくモヤモヤは、これからの彼女の人生のなかへ引き継がれていくことになるのだろう、と、映画を見たあとの余韻を味わう。
わたしはあとに余韻の残る映画が好き。
原作は発売されたころ読んだ。買った電子書籍のなかにあるかな、と検索したら、なかった。紙の本で読んだみたいだ。
読み直したくなり、Kindle版をダウンロードする。
桜木紫乃の作品は、全部を読んでいないけど、好きな作家のひとり。映画化作品を見るのは、篠原哲雄監督、佐藤浩市主演『起終点駅 ターミナル』(2015年)以来、2度目。
武正晴監督の映画では、安藤サクラ主演の『百円の恋』(2014年)が強く印象に残っている。あとの作品は記憶にない。それだけしか見ていないのかもしれない。
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帰りは、回転寿司。
むかしはすんなりはいれず時間待ちだったが、いまは待たずにはいれる。飲食店へはいると、どこも新型コロナと闘っているのを実感する。
この日は、生ビールを2杯。