三女優の競艶?
3月4日、水曜日。小雨。
「イオンシネマ板橋」へ、シェイ・ローチ監督の『スキャンダル』を見にいく。新型コロナウィルスの影響もあって、映画館だけでなく、ビルのなか全体にひとが少ない。1階のいつも満席のテーブルも席があいていたので、そこで100円コーヒーを飲んでから、映画館のある5階へいく。
第92回アカデミー賞3部門ノミネート 映画『スキャンダル』本予告
2016年にアメリカで実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動をシャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの豪華共演で映画化。
アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元・人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/92238/
テレビ界の権威が、人気キャスターたちにセクハラ行為をしていた。それも、被害者はひとりではない。
そんな映画の元になったニュースも記憶に新しい。勇気ある告発で、事件があらわになった。この事件は大きな広がりをみせていった。
日本でも、伊藤詩織さんが、安倍政権に近い元TBSの山口敬之記者を、準強姦罪で告発するという事件があった。詩織さんは、実名と顔を公開して、社会に訴えた。
しかし、メディアの報道は腰がひけていて、大きな広がりになったとはいえず、インターネットでは被害者の詩織さんを非難する書き込みが少なくなかった。
被害者を叩く。わたしは、これがよくわからなかった。ものを判断する基準が自分とはちがいすぎることにおどろいた。
そんなこともあって映画『スキャンダル』に興味がわいた。期待通り、女性たちの勇気に気持ちのいい興奮を感じた。
なぜ日本ではこういう勇気ある行動が評価され、大きな広がりにならないのか。「Me Too」運動に拡大していかないのか、そんな疑問も感じた。
むかしの美人女優から、演技派女優に変貌しているニコール・キッドマンは、やっぱりよかった。メイクのせいかもしれないが、けっして美しいとはいえない「素顔」をスクリーンのなかに曝けだす。
美人女優のころからニコール・キッドマンは好きだったが、ラース・フォン・トリアー監督のデンマーク映画『ドッグヴィル』(2004年公開)を見て、見る目をあらたにした。
村民たちの善意が、ちょっとしたことから悪意に変化してしまう集団心理の怖さを実験的な手法で描いた作品。ニコール・キッドマンは、その恐怖に翻弄される女性を演じた。
この映画以降、ニコール・キッドマンの出演する映画は、多方面に広がっていったような気がする。
しかし、個人的にはものたりなさもある。
映画『スキャンダル』は、3人の女優たちの勇気ある美しさを描いているが、いってみれば勧善懲悪。スカッとする以上の奥行きを感じられない。アメリカ映画にしばしば感じるものたりなさを、この映画にも少し感じた。