帚木 蓬生(ははきぎ・ほうせい)の原作『三たびの海峡』が発表されたのが1992年。日本人によって書かれた、日本の朝鮮人強制連行の実態を描いた小説だった。
アジア・太平洋戦争での日本の誤った国家政策が、どれほど隣国のひとびとを苦しめたか、わたしは激しい苦痛と涙なしには読めなかった。
- 作者:蓬生, 帚木
- 発売日: 1995/07/28
- メディア: 文庫
神山征二郎監督が、1995年に同じタイトルで映画化した。
原作を忠実に映画化しているけれど、原作で直撃された心の激痛には及ばなかった。
でも、この映画の出来がよくなかったわけではない。先に小説を読んでなければ、十分感動できる作品だった、といまもおもう。
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2019年に平山秀幸監督で映画化された『閉鎖病棟』も、原作は帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)。
この映画を見てから、もう一度、帚木蓬生原作の『三たびの海峡』を映画や本で追体験してみたいとおもった。
本を読むより、映画のほうが手っ取り早い。先に神山征二郎監督の映画を見ることにした。
主演は、三国連太郎。強制連行されて過酷な日々を送る若き日を、李鐘浩(リ・ジョンホ)が演じている。
その他、南野陽子、隆大介、永島敏行、風間杜夫などが共演。南野陽子が可憐!
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太平洋戦争末期、若き河は北九州の小さな炭坑に連行され、朝鮮人を人間と思わず牛馬のようにこき使う日本人の労務監督・山本三次の下で地獄のような日々を過ごした。脱走を謀る者へは凄まじいリンチが加えられ、労働争議を起こした金などは自殺に追い込まれた。河はついに脱走を決意し、見回り労務を殺して逃走。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/39577/
主人公の河時根(ハーシグン)は、仲間の助けもあってなんとか脱走に成功する。
そして、日本人の若い戦争未亡人・千鶴と出逢い、恋に落ちる。
日本の敗戦後、河時根(ハーシグン)は、千鶴とお腹の子を連れて韓国へ帰るが、故郷は日本人の千鶴を受け入れてくれない。河時根と千鶴は、村八分にされる。
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物語は、まだまだ続くがここであらすじを追っていってもしかたがない。
いまも日本と韓国でギクシャクしている徴用工の問題などを考えるとき、実際にどんなことがあったのかを、わたしたちは知らなすぎる。
『三たびの海峡』は、ノンフィクションではないけれど、優れた原作の映画化なので、わたしたちに何かヒントを与えてくれるような気がする。
こんどは原作を読み直してみたい。