3月15日㈬。
「池袋HUMAXシネマズ」へ、三宅唱監督の『ケイコ目を澄ませて』を見にいく。これで3回目。
「キネマ旬報」や「毎日映画コンクール」で、作品賞を受賞し、主演の岸井ゆきのは、軒並み主演女優賞をとっている。それほど素晴らしかった、かというと、ほんとうに素晴らしかった(笑)。
「日本アカデミー賞」は、この映画を作品賞の「ノミネート」にもいれなかった。どんなメンバーが選考しているのか、逆に不信になる。
セリフのない主演女優(岸井ゆきの)。顔の表情の小さな変化や、両手を使って、感情の動きを表現する。圧倒的にすごいのだ、これが。
岸井ゆきに、負けず劣らず素晴らしいのが、ボクシングジムの会長を演じる三浦友和。このひとの脇役にはいつも敬意をもって見ているが、今回は一段と惚れ惚れした。
経営不振に心を悩ませながら、ジムに通ってくるボクサーや練習生にあたたかい目を向ける。そのなかに「ことさら」な演技がない。技巧を感じさせない。聴覚障害のケイコを見るさりげない優しさが、この映画の奥ゆきになっている。
三宅唱監督作品では、これまで『きみの鳥がうたえる』が好きで、この映画で石橋静河のファンになったが、『ケイコ目を澄ませて』は、それに匹敵するかーー以上かもしれない。
淡々としていて、感情を煽る描き方はしない。なのに濃密。だから一瞬一瞬目を離せない。
ラスト・シーンは、見るたびに胸が熱くなる。
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このまま居酒屋でお酒を飲んでしまうと、あと動くのがメンドーになるので、少し歩きたい。新宿御苑にいってみる。混んでいた。
早咲きの桜が咲いている。安倍晋三氏が支援者たちに「桜を見る会」を開催して話題になったのが、ここ新宿御苑。
残念ながらわたしは安倍晋三氏から招待されなかったので、ひとりで「桜を見る会」を楽しむことにした。
広い敷地のあちこちに早咲きの桜や枝垂れ桜が咲いている。
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先日といっても、半年くらい前、成瀬巳喜男監督の『山の音』をDVDで見た。ラストシーンが新宿御苑で撮影されている。
映画のラストシーンで、義父(山村聰)と嫁の菊子(原節子)は、この場所で会い、菊子は、夫(上原謙)との離婚の決意を告げる。同時に、離婚は優しかった義父との別れも意味していた。
ひとつ感じたこと。
新宿御苑のこの場所は、園内の奥のほうにあって、初回待ち合わせには不向き。わかりにくい。節子は義父と、以前にもこの場所で会ったことがあるのだろうか。
ぞうであってもふしぎでないくらい、ふたりのなかに、親愛の情が流れている。
優しい義父と、美しいお嫁さんは、最後の短い時を過ごし、それぞれに別れていく。
ロケ地の今。