『82年生まれ、キム・ジヨン』。コン・ユとチョン・ユミ。
10月24日、土曜日。快晴。
この日、池袋の「グランドシネマサンシャイン」へ、映画『82年生まれ、キム・ジヨン』を見にいってから、ずいぶん日にちが経ってしまった。いい映画だった。見たことを記録しておかないのは、もったないので遅ればせながらブログに書くことにしました。
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『82年生まれ、キム・ジヨン』予告 10月9日(金)より 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨンは、母として妻として生活を続ける中で、時に閉じ込められているような感覚におそわれるようになる。単に疲れているだけと自分に言い聞かせてきたジヨンだったが、ある日から、まるで他人が乗り移ったような言動をするようになってしまう。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/92450/
読んでから見るか、見てから読むか、ということだけど、ふだん、あまり決めていない。
今回は、映画化のことを知る前に、原作をAmazonからダウンドロードしたけれど、説明的な書き出しにうまくはいれず、途中で読むのを抛り出してしまった。
10月24日(土)、池袋でやっているのがわかったので、見にいく。わたしは以前、この映画の夫役コン・ユを『新感染 ファイナル・エクスプレス』というゾンビ映画で見ていて、映画じたいもよかったけれど、主演のコン・ユがアメリカ映画のような偉丈夫なヒーローでないのも、気にいっていた。どこか見かけに弱々しさを感じる繊細なヒーローだった。
キム・ジヨンを演じたチョン・ユミも『新感染』に出ていたのだけれど、はじめ気がつかなかった。
映画『82年生まれ、キム・ジヨン』を見てから、もう一度『新感染』を見て、お腹にあかちゃんのいる女性を演じたのが、チョン・ユミだと気がついた。
映画『82生まれ、キム・ジヨン』には、このチョン・ユミとコン・ユのふたりが夫婦役で登場する。
仕事をやめて家庭にこもり、育児と家事の日々を送る女性の閉塞感を、ていねいに描いた作品。家庭の問題だけでなく、彼女の周囲にいるひとたちの、男女の格差を平然と容認している社会構造の歪みもとらえられている。
女性が、社会のなかで男性のなかにはいって生きていくことが、どれだけ大変なことか・・・それがキム・ジヨンのこころの軋みとして伝わってくる。
その妻の苦しみをいっしょに背負う、やさしい夫をコン・ユが演じている。
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じつは、キム・ジヨンの夫、チョン・デヒョンは、原作ではそれほど印象的ではない。あとから原作を読み終えて、チョン・デヒョンの人物像は、映画の創作にちかいものだとわかった。
原作は、キム・ジヨンの人生を精神科の女医さんの視点から俯瞰的に描いている。だから人物のこころのなかに接近しない。
キム・ジヨンが女性として、どのような不合理な男女格差のなかで生きてきたか、というのは、年代を追って総合的に描かれているけれど、細かなキムのこころの痛みや、夫婦間の機微には接写していない。
映画を見てから、原作を読んだらスッとなかへはいっていけた。
キム・ジヨンの姿が、イメージしやすくなった。姿が具体的に浮かばなかった夫のチョン・デヒョンは、映画を見てからは、原作の描写がものたりなく感じた。
映画と原作は、描かれているテーマは同じ。しかし、表現方法は、ずいぶんちがう。
映画は家族三人に起こる家庭劇となっていて、作品として濃密であり、チョン・ユミとコン・ユの精細な演技に、感動した。