イ・ジョンヒャン監督の『おばあちゃんの家』をレンタルDVDで見る。
2002年製作の韓国映画。
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わがままに育てられたソウル生まれの孫と、山村で素朴な生活を送る祖母のひと夏の交流を「美術館の隣の動物園」で鮮烈なデビューを飾ったイ・ジョンヒャンがユーモアあふれる視点で描く。
おばあちゃん役のキム・ウルブンは、実際にロケ地の村で暮らし、「生涯1度も映画を見たことがない主演女優」という点でも話題に。孫のサンウとその母親役のほかは、ロケ地の村人たちがキャスティングされている。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/6919/
失業したおかあさんが、新しい仕事先を見つけるまで、実家のおばあちゃんに息子をあずかってほしい、とやってくる。
住んでいるのは、山の上のすごい田舎。さらに、おばあちゃんは、耳が聞こえないし、声も発しない。
ソウルの街で育った少年はわがままだった。年老いたおばあちゃんも田舎の暮らしもいやでいやでしょうがない。
ゲーム機の電池が切れると、代わりの電池を買うのに下の町までいかなければならない。町へいくバスはなかなかこない。少年は、言葉をしゃべらないおばあちゃんに対して、なにかとつっけんどんな態度で接する。
おばあちゃんがそれをどう受けとめているのか、怒っているのか、もてあましているのか、深いしわだらけの顔からはわからない。
しかし、とにかく、おばあちゃんは、少年を叱ることはなかった。
少年とおばあちゃんは、下の町までバスで買い物にいく。少年はやっと電池を購入できる。
帰りのバスに少年は乗ったが、おばあちゃんは乗ってこない。そしてバスの窓から手の動作で荷物を持っていってくれとたのむが、少年は無視する。少年は、事情がわからないままひとりでバスにのって山の上の村へ帰る。
次のバスにもおばあちゃんは乗っていない。少年がいぶかしくおもっているとバスのうしろからおばあちゃんは、杖をついて山道を登ってくる。
帰りのバス代がひとり分しかなかったのだ。
おばあちゃんは、杖1本で、どれだけの距離を歩いてきたのだろうか。
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むかしきれいだった女優が年月を経て、おばあちゃん役をやるようになった、というのとはぜんぜん違うな、とおもっていたら、おばあちゃん役は、この村の住民だというからおどろいた。
実際の役者が演じたのは、少年とおかあさん役のふたりだけで、あとは村のひとたちがそのまま映画に出演している、とあとで知った。
地味といえば、地味このうえない。しかし、その効果は映画に出ていた。
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ひと夏を過ぎて、おかあさんが少年を迎えにくる。あかあさんにはわからなかったが、少年のおばあちゃんを見る目は、夏のあいだに変わっていた。
おばあちゃんの孫への無償の愛情が、演出らしい演出もなく、全編に滲み出ているようなしみじみした作品だった。