武正晴監督の『アンダードッグ 』は、前編・後編が同時公開だけれど、1日で両方見る時間がとれないので、2度に分けて見ることにした。
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前編を見たのは、12月3日(木)。歩いていける近くの映画館「イオンシネマ板橋」で見る。
監督は、以前ボクシング映画『百円の恋』で話題をよんだ武正晴。
少し前には、同監督の『ホテルローヤル』が公開されたばかり。
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以前見た『百円の恋』でおどろいたのは、ボクシングの戦闘シーンの迫力。わたしは、実際にはボクシングにはほとんど関心がないのに、映画のなかの闘いのリアルさに眼を奪われてしまった。
主役の安藤サクラがひきこもりでぶよぶよした体型をしているのに、ボクシングをはじめてから、どんどんからだが締まって、格闘技の体型になっていくのもびっくりだった。
そのときのおどろきと感動があったので、武正晴監督が再び『百円の恋』のスタッフを結集して、ボクシング映画を撮った、というのでさっそく見にいった。
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主演の、ピークをすぎたボクサー・末永晃(すえなが・あきら)を演じるのは、森山未来。その演技を超えた演技に言葉を失う。
この連戦連敗の落ち目のボクサーに、テレビの企画で、売れないお笑い芸人(勝地涼)とのエキシビション(非公式の試合)の企画がとびこんでくる。
晃(森山未来)が、先に二・三度ダウンしてくれれば、あとは好きなようにしていい、つまり、ボコボコにしてプロの厳しさをみせつけてもいい、というテレビ側の条件。
かつて日本チャンピオンにも挑戦したことのある晃には屈辱的な仕事だが、ギャラがいいので、事務所も乗り気になり、晃もなっとくする。
前編のみどころは、この見せものにすぎない企画でも、対戦するふたりは息づまるような激しい試合を展開する。その描写の質感の厚さ、リアル感。
森山未来は、拳闘選手のからだにしか見えない。対戦相手になるお笑い芸人を演じる勝地涼も、激しいトレーニングで鍛えられ、どんどんからだが締まっていく。
業界はちがうけれど、負け犬同士の勝負。
誰が見ても、お笑い芸人は、落ち目とはいえプロ選手である晃(あきら)の勝負になる相手ではない。しかし、試合がはじまると、、、。
テレビの企画したショーだったはずが、息をのむような試合になっていく。ふたりの、顔が変形するような激しい闘いが続く。
森山未来の落魄の拳闘選手は、すごすぎる。
勝地涼。誰もがリングでボコボコにされるのを想像している。しかし、彼は譲らない、撃たれても撃たれても立ちあがる。なにかの意地をかけて、しゃにむに挑戦していく。
ここまでが前編。
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激しい映画からの興奮で、映画館を出ても余韻が残る。
帰り、室内の壁にれいわ新撰組のポスターが貼ってあるモンゴル料理屋さんで、ラーメンと半チャーハンを食べながらホッピーを飲む。
武正晴監督の最近見た近作の2つ『ホテルローヤル』と『アンダードッグ 』の作風が、ちがいすぎるのにも、おどろいた。
どちらの映画も、登場人物が生きることに不器用である、という共通点があるけれども。