かぶとむし日記

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ザ・フー「マイ・ジェネレーション」〜ドラマ性を排除した傑作映画『17歳の瞳に映る世界』。

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『17歳の瞳に映る世界』。スカイラー(左)とオータム。




7月28日(水)、炎暑。誕生日。


朝、LINEをひらいたら妻から「誕生日おめでとう。元気に長生きしてください」という文面があった。


「長生きか‥‥」


ザ・フーの作曲者&ギタリスト、ピート・タウンゼントは、「マイ・ジェネレーション」(1965年)で、「歳とる前に死んでしまいたい」と書いた。


当時の若者の気分を歌にした「マイ・ジェネレーション」は、初期ザ・フーの代表曲のひとつ。


ピートは、歳とることは有害だと書いた。


「やつらは、おれたちを抑えつけ、ケチをつける。とっとと消えてくれ!」


そのピート・タウンゼントも、いま76歳(笑)。


幸いなことに(といっていいのか?)、4人のオリジナルメンバーのうち2人を失いながらも、ザ・フーは健在。いまもステージで「マイ・ジェネレーション」を演奏する。





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1967年、ザ・フーの壮絶なステージ。「古い価値観を破壊する!」‥‥それを可視化したようなライブ・パフォーマンス。



ピート・タウンゼント=作曲、ギター、ボーカル。
ロジャー・ダルトリー=ボーカル。
キース・ムーン=ドラムス。1978年没(32歳)。
ジョン・エントウィッスル=ベース、ボーカル。2002年没(57歳)。





日比谷のT0HOシネマズシャンテで、エリザ・ヒットマン監督『17歳の瞳に映る世界』アメリカ)を見る。




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新鋭女性監督エリザ・ヒットマンが少女たちの勇敢な旅路を描き、第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞審査員グランプリ)受賞したドラマ。


友達も少なく、目立たない17歳の高校生のオータムは、ある日妊娠していたことを知る。彼女の住むペンシルベニアでは未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができない。同じスーパーでアルバイトをしている親友でもある従妹のスカイラーは、オータムの異変に気付き、金を工面して、ふたりで中絶に両親の同意が必要ないニューヨークに向かう。



(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/92687/


妊娠した17歳の少女・オータム(シドニー・フラニガン)の相手の男性は、登場しないし、話題にもあがらない。


地元で堕胎の手術をしようと医者に相談するが、両親の同意を得なければならない、といわれる。女医さんは、総じて彼女にやさしいが、だからといってルールを破ってはくれない。


オータムは、インターネットで調べ、自分で流産をしようと腹を殴ったりするが、うまくいかない。


同じバイト先で働いている従妹のスカイラー(タリア・ライダー)は、オータムの行動から、彼女が妊娠していることに気づく。


このスカイラーがよかった(もちろんオータムもいい)。


スカイラーはオータムに、相手の男性が誰かを訊ねもしないし、気やすめに、慰めたり、励ますわけでもない。


レジからお金をぬいて、オータムのニューヨーク行きに同行する。


ニューヨークへいくバスのなかでも、手術を受けるオータムは、はじめての経験への不安から不機嫌だ。


スカイラーも話しかけない。黙って寄り添うってこういうことか。


説明らしい説明がない映画だった。


それでも、退屈するどころか、どんどん惹きこまれていく。


『17歳の瞳に映る世界』は、17歳の少女たちの冒険ものがたりであり、静かな友情を描く傑作映画だった。






夕方、アパート近くの不良系(?)居酒屋で飲んでいると、めったにならない携帯電話が鳴った。


「ジジか?」
双子の孫のどちらかだった。顔は区別がついても、声はどっちかわからない。
「ああ、きみはどっち?」
「ミミだよ。ジジはなん歳になった?」
まわりに他の客がいるので歳も告白したくないし(笑)、長電話もしたくない。
「7と2だよ」
「72歳か。‥‥ユーカに代わる」


「ジジおめでとう」(とユーカ。後ろで、そういわせている娘の声がする)
「ありがとう。そばにおかあちゃんいる?」
「いるよ。ママ‥‥」と呼ぶ。


娘が出る。
「ジジ、おめでとう!」
「ありがとう。いまね、居酒屋にいるんだよ」
「飲んでるの? 大丈夫?」
「うん。だから長話できない」
「わかった」
「電話ありがとう」
「うん」




1時間半ほど飲んで外へ出ると、まだ明るい。携帯の時計を見たら、午後の5時半だった。