4月2日(土)、晴れ。
「池袋HUMAXシネマズ」へ、中川龍太郎監督、岸井ゆきの・浜辺美波主演の『やがて海へと届く』を見にいく。
早めに着いたので、近くの「ルノアール」で、コーヒーとモーニングのトースト。
1972年にミニコミ誌のひとつとして発刊された「ロッキング・オン」誌の約10年間(1970年代)の軌跡。
だれも出版の内情に詳しいひとのいないまま試行錯誤の連続。全員給料なしのまま突き進むエネルギーは、やっぱりすごい。
読者の投稿原稿を記載する雑誌だから、原稿料が発生しないのはいいとして、そこで働くスタッフが無給のまま、ほかのアルバイトをして継続していく原動力は、やっぱりロックに対する思いれの強さだろう。
創成期の4人(渋谷陽一、岩谷宏、松村雄策、橘川幸夫)は、雑誌を軌道に載せるまで苦労を重ねるが、著者自身は、31歳で「ロッキング・オン」誌を辞める。
その心情的経緯を次のように書いている。
DON'T TRUST OVER THIRTYという20歳前半の意識ではじめたロッキング・オンだったが、自分自身が30歳になった。僕はある種の失望感を感じていた。それはロッキング・オンのスタッフたちにではない。僕が愛した「読者」に対してだ。僕らが雑誌をはじめた時、DON'T TRUST OVER THIRTYという意識を持っていたが、それは同時に、自分たちが30歳になったら、若い世代に同じようなことを言われ、軽蔑され、乗り越えられるんだなあ、という意識も同時に持っていた。
しかし、現実は、そうはならずに、むしろ逆で、成功しつつあるロッキング・オンのスタッフというだけで、お山の大将にされたり、無条件で尊敬されるようになってしまった。「そんな馬鹿な、こんなのロックではない」という怒りが湧いてきた。
(略)
20代でやってきたことを全て終了し、蔵書やレコードの山も、若い連中を集めて、みんな持っていってもらった。70年代は自分は20代だったが、それを終わらせることによってでしか進めない30代を予感した。
「30歳以上の人間を信じるな」といったのは、ザ・フーのピート・タウンゼントだったような気がする。
しかし、そういったピート自身も、わたしたちも、1980年代にはいると30歳を超えてしまった。
橘川幸夫さんの、初心を忘れない潔癖さに感心しながらも、ロックを聴く、ということがそんなに許容量の少ないものなのか・・・そんな反感も少し湧く。
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11時20分から『やがて海へと届く』がはじまる。
彩瀬まるの同名小説を岸井ゆきの主演、浜辺美波の共演で映画化。引っ込み思案な性格で自分をうまく出すことができない真奈は、自由奔放でミステリアスなすみれと出会う。2人は親友になったが、すみれは一人旅に出たまま突然姿を消してしまう。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/95960/
岸井ゆきのは、今泉力哉監督の『愛がなんだ』を見て、「戸惑いの感情」を上手に表現できる女優だなあ、とおもった。
この映画『やがて海へと届く』の「真奈」役でも、岸井ゆきのの繊細な演技は十分に活かされていて、見入ってしまった。
岸井ゆきのがあまりうまいので、浜辺美波の「すみれ」がぎこちなく見えてしまう。美少女だな、っておもうけれど、ミステリアスなふんいきは感じられない。
中川龍太郎監督の作品では、朝倉あき主演『四月の永い夢』(2017年)、松本穂花主演『わたしは光をにぎっている』(2019年)を見た。
どちらも生きることに不器用な女性を描いている。共感できる女性たちだ。
こんどの映画では、岸井ゆきのが、彼女たちの後継者になるんだろう、とおもう。
それと、中川龍太郎監督の女性たちは、幻影の中で生きているような、神秘的な美しさがある。
その女性の神秘的な美しさは、岸井ゆきのではなく、浜辺美波が引き継いでいるのかもしれない。
ただ、浜辺美波は、神秘的というよりも、現実的に美しい(笑)。
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池袋から王子駅へ向かう。これから王子の立飲み「平澤かまぼこ」で一杯やり、「ひとり花見」をやろうという予定。