『アンダーカレント』。素晴らしい映画に出会えた!
10月8日㈰。
妻の運転で、「ウニクス南古谷」へ、冨永昌敬監督、池松壮亮主演の『白鍵と黒鍵の間に』を見にいく。
池松壮亮が1人2役で主演を務め、昭和末期の銀座を舞台に2人のジャズピアニストの運命が交錯し大きく狂い出す一夜を描いたドラマ。「素敵なダイナマイトスキャンダル」の冨永昌敬監督が、ミュージシャン・南博の回想録「白鍵と黒鍵の間に ジャズピアニスト・エレジー銀座編」を大胆にアレンジして映画化した。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/99235/
★
見た感想を結論からいえば、期待はずれだった。スジの展開は安直だし、後半部分は、シッチャカメッチャカのようにしかおもえない。
ピアニストがボスから弾いてはいけない、といわれている曲(「ゴット・ファザー愛のテーマ」)がある。
この設定は、マイケル・カーティス監督の名作『カサブランカ』(1942年)の二番煎じではないか。しかし、こちらは、もったいぶるほどのことはない。たいした必然性もない。何が描きたかったのだろうか。
これが『素敵なダイナマイトスキャンダル』の監督作品とは、残念すぎる。
池松壮亮さん、宝の持ち腐れ、という感じ。
★
「月之湯」のかなえさん(「ガジェット通信」より)
https://getnews.jp/archives/3446973/gate
10月9日(月)。
翌日、同じく妻の運転で、「ウニクス南古谷」へ、今泉力哉監督、真木ようこ・井浦新(いうら・あらた)主演の『アンダーカレント』を見にいく。
★
かなえ(真木ようこ)は、夫・悟(永山瑛太)とともに、銭湯を営んでいる。生活に不満はなかったし、夫婦仲も悪くなかった。
ところが、その夫が突然失踪する。原因が思いつかない。
友だち(江口のりこ)の紹介で、変わり者の探偵(リリー・フランキー)を紹介され、夫の捜索をお願いする。この探偵役のリリー・フランキーがいい。他の代役は想像できないくらい。
一方、堀という男(井浦新)が、銭湯組合から職の紹介を受けて、やってくる。
「うちみたいなところで?」
「よろしければ」
というような話し合いのあと(正確なセリフじゃありません)、堀に手伝ってもらうことになる。
堀は、物静かな男だが、よく働いてくれる。
夫の原因不明の失踪。やってきた訳ありの男ーー謎がどんどん深まってくる。
なにげない日常を丁寧に描くのが、今泉力哉監督流、とおもっていたが、この作品、ミステリーの濃度が高い。
ひよっとしてとおもったら、今泉監督としてはめずらしく、豊田徹也氏の『アンダーカレント』というコミックが原作だとわかった。
とはいっても、今泉力哉監督らしい、ワンカット長回しのシーンもある。
後半、失踪していた夫がみつかる。
探偵のはからいで、かなえは、海辺で夫と会う。
向こう一面に広い海が見えるテーブルで、向かいあう。
ふたりは、夫婦のころでさえ言えなかった、こころの奥を互いにさらけ出す。ゆっくりと考えながら、訥々(とつとつ)と、沈黙をはさみながら、話す。
ミステリー映画としたら、テンポが悪いかもしれないが、今泉映画のみどころは、ここ。
ワンカットの緊張感がすごい。
ミステリー的な興味でひっぱりながら、ひとりひとりの人物をきちんと描くところは、いかにも今泉力哉監督作品という感じ。ラストシーンのさりげない終わり方もよくて、パチパチ手を叩きたくなった(笑)。
★
妻は、映画館を出ると「よかったね」といった。わたしも、うなづきながら、満足感を味わっていた。