かぶとむし日記

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濱口竜介監督『偶然と想像』を見にいく(12月22日)。

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12月22日(水)、晴れ。


渋谷の「Bunkamuraル・シネマ」へ、濱口竜介監督の『偶然と想像』を見にいく。


新宿まではそう遠く感じないけど、渋谷まではあまり足が向かない。どうしてだろう? 


『偶然と想像』は、東京では渋谷しかやってないので、ちょっとがんばっていく。





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濱口竜介監督の作品は、これまで『ハッピー・アワー』(2015年公開)と『ドライブ・マイ・カー』
(2021年公開)を見ている。


『ハッピー・アワー』は、317分という長時間映画だったが、退屈しなかった。登場する4人の女性が特別華やかとかいうわけではないのに、彼女たちが旅行したり、ワークショップで長々体操のようなことをするのを、飽きもせず眺めていた。新鮮な映画だった。


それに比べると、『ドライブ・マイ・カー』にはそれほど魅かれなかった。濱口竜介監督の個性が作品に出ているとはおもわなかった。


今回の『偶然と想像』、けけっ、傑作(笑)。


『魔法』
『扉は開けたままで』
『もう一度』


この3つの短編映画がおさめられている。



『魔法』は、偶然親友の話す新しい「彼」が、元カレだったことを知った女性の混乱。


タクシーのなかで、親友の、最近あった「魔法のような出逢い」の恋バナを聞くうちに、その相手が自分の「元カレ」だったことに気づく。


彼女は、「元カレ』の事務所に乗り込み、いま、わたしに対してどういう想いでいるのか、迫る。「元カノ」と「元カレ」のディスカッションがはじまる。


主演の「元カノ」を演じる女優は、『街の上で』今泉力哉監督、2021年公開)で、古本屋の女性・冬子を演じた古川琴音。キリッとした目鼻立ちと童顔とがいり混じった女優。岸田劉生の「麗子像」を連想する。



『扉は開けたままで』は、タイトルが意味をもつ。教授から、土下座をしても単位をもらえなかった学生が、自分の恋人に教授を誘惑させて復讐しようという話。


女性は、教授の部屋のドアを閉めて、誘惑しようとするが、教授は「扉は開けたままで』という。それがタイトルになっている。


彼女の誘惑は成功したのかしなかったのか、そのあとの偶然が教授の人生を転覆させる。



誘惑する女性役は、森郁月(もり・かつき)という女優。初めて見たが、魅力的。



『もう一度』は、郷里の仙台へ帰った女性が、むかし高校の音楽室でピアノを弾いていた同窓生と偶然の再会。


彼女の家へ寄って懐かしそうに昔を語り、今の暮らしの悩みなどを語り合うが、そうしているうちに二人は同窓生というのは勘違い、初めて会ったひとだったことを知る。


しかし、ふたりはそれぞれの想い出のなかにいる「同窓生」を演じることにして、「再会」をよろこび、静かにわかれる。


ふたりの女優(占部房子、河合青葉)の味わい深い会話が見どころ・聞きどころ。




登場人物だけでなく、見ている観客も、作品の空白部分に、想像が広がる作品。わたしには、今年見たなかで、『街の上で』に並ぶ、忘れられない1本になった。


というわけで、渋谷まで行ったかいがあったぞ(笑)。



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https://guzen-sozo.incline.life