かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

奥田英朗の小説『サウスバウンド』の話が長くなったので・・・(11月22日)。


2007年、映画化された『サウスバウンド』(森田芳光監督、出演:豊川悦司天海祐希など)。




11月22日㈬。晴れ。
ひさしぶり「ポレポレ東中野」へ、映画『NO選挙、NO LIFE』を見にいく。前回映画館のある側と反対口に降りたので、今回は注意して東中野駅西口で降りた。



早めに着いたので、1階入り口にある喫茶で、コーヒーを飲みながら、以前一度読んだことのある奥田英朗の『サウスバウンド』(Kindle版)を読む。最近妻が読んで「おもしろい」といっていたので、もう一度読みたくなった。




元市民活動家が、父の上原一郎。ガタイも声もバカでかい。しかし、いまは、組織を脱退して、毎日家でぶらぶらしている。


家計は、母が喫茶店を経営して支えている。なのに母は父に仕事を探せとはいわないし、父も家のなかで、母に対して特別な気遣いをみせない。息子の上原二郎(小学6年生)は、ちょっと変わった父母だとおもっているが、夫婦の仲はよいようだ。


父は、国家や学校が嫌い。何か不満があると学校へ文句をいいにいく。二郎にも「毎日学校なんか行っておもしろいのか」と、まるで学校へ行くのが悪いことのようにいう(笑)。


最近、この家にやってきて、無料で間借りしているアキラおじさんも仕事をもってないようだ。それで、父と同じようなことをいう。

「今の世の中、一見平和そうに見えるけど、それはマスコミが事実を伝えていないからに過ぎないんだよ。世界中のあちこちで紛争は起こっているし、その大半はアメリカの覇権主義のせいなんだ」


(略)


「そして日本ときたら、アメリカの完全な手先で、言われるままに金を醵出(きょしゅつ)している。要するにいい金づるなのさ。政府が腰抜けなんだな。おまけに国民が平和ボケしていて、正当な権利をごまかされていることにすら声をあげない」


単行本が刊行されたのは、2005年。


18年経っても、この日本、何も改善されてないな、とおもうが、それはともかく、小説じたいは、それほど硬いものではない。むしろ娯楽性が強い。


「第一部」は、東京・中野区に住むこの上原一家のものがたり。何事も穏便にすませない父の行動に、学校ももてあましているので、二郎は肩身がせまい。さらには、二郎が不良中学生集団にお金を脅迫されている話も、多くの頁が割かれている。


「第二部」は、内地を脱出して、沖縄の離島が舞台になる。ここでは、土地を買収して、リゾート・ホテル建設をすすめる企業と、賄賂で結託した町長(?)を相手に、父のとんでもない闘いが描かれる。


伝説のヒーローだといわれていた父の勇敢な姿に、二郎は、なぜ母がいつも文句のひとつもいわず、いしょにいたのかを、理解する。なぜなら、母も父といっしょに闘う姿勢を崩さないから。母も同じ穴の狢(むじな)だった(笑)。


かなり破天荒な話だが、奥田英朗の手にかかるとおもしろい。再読だったこともあって、どんどんものがたりが進んでいく。



奥田英朗『サウスバウンド』の話が長くなってしまったので、映画『NO選挙、NO LIFE』の感想はまたあとで(笑)。