今泉力哉監督の『ちひろさん』は、劇場とNetflixで同時に公開。わたしは、Netflixで見た。
★
飄々とした性格のちひろさんは、前職が風俗嬢だったことを隠さず、いまは「のこのこ弁当」というお弁当屋さんで働いている。
性格が明るくてサバサバしているので、常連のお客さんたちや、お店のひとたちにも好感をもたれている。
ちひろさんは、周囲のひとたちを明るく照らす太陽のような女性だが、映画がすすむにつて、彼女にも孤独な影があることがわかってくる。
しかし、それが何か、やがて明らかになるーーという仕立ての映画ではない。背景は最後までぼんやりしている。
同様に、登場する人物は、それぞれ問題をかかえているが、深くは描かれない。ちひろさんとの接点でスポットがあてられるけれど、あとはひとりひとりが自分で向かいあって生きていくしかない、という仕立てになっている。
このぼんやり感ーー今泉力哉監督風ともいえる。わたしは、こういう気張らない映画が好き。
テレビの創世記、『名犬ロンドン』(1963年〜1965年に放映。→「Wikipedia」参照)というアメリカのドラマがあった。
主演はロンドンというシェパード犬。街から街へ放浪していく。
その街の、問題をかかえているひとに飼われ、ロンドンは、彼らの悩みの解決を手助けする。
「ずっとうちにいてくれ」と助けられた人たちはロンドンに懇願するが、ドラマの最後には、そっとその家を出ていく。
そういう一話、一話、完結のシリーズ・ドラマだった。
ちひろさんも、その街のひとたちに愛されながら、なぜかドラマの最後には、みんなのもとから去っていく。
人間版『名犬ロンドン』だと、わたしはひとりでなっとくした(笑)。
名犬ロンドンに負けず可愛い(笑)。
今泉力哉監督の最高傑作とは思わないけれど、気持ちよく見れた。