かぶとむし日記

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俳優が語る成瀬巳喜男の演出〜その1

村川英編「成瀬巳喜男演出術」(ワイズ出版
成瀬巳喜男 演出術―役者が語る演技の現場


成瀬巳喜男監督の作品に出演した俳優のインタビューを抜粋します。まずは高峰秀子氏から……。


高峰秀子のインタビューから


成瀬巳喜男の音楽

・・・成瀬さんの映画音楽に関しては、よく斎藤一郎さんが担当なさっていましたけど、成瀬さんというのは音楽に対しては……。


高峰:入れたくないんです。音楽監督なんて、始めからいらないんです。それで斎藤さんがやってらしたというのは、音楽をいれなくても、絞っちゃっても文句を言わない方なんですよ。ここはいらないね、と言えば「はい」という人です。


○「浮雲」と森雅之

・・・高峰さんはいろいろな相手役の方とおやりになっていますが、森さんという方は、俳優としていかがでしたか?


高峰:最高の役者さんでした。強いて言えば、陽ではなくて陰の性格ですけども。(略) 


高峰:役者には「間」みたいなものがあるでしょ。感性というか……。森さんはその「間」を、こちらがどういうふうに持っていっても受けてくれる。ルーツが、きっちりしているんですね。単に演技ということではなく、役者としてしっかりしている。だから、どこから突っつかれても押されても大丈夫な方なんです。存在感の出しかたというか、力強さとかね。そういうものでは一番だったんじゃないですか。


成瀬巳喜男とカメラ

高峰:成瀬先生は全然、キャメラを覗かないんです。木下(恵介)さんはキャメラマンを突き飛ばして、自分が決める。だから、やっぱり成瀬さんはキャメラマンを信頼していたんじゃないですか?


○俳優として学んだものは?

・・・成瀬さんとお仕事をなさって、俳優としてプラスになったと思うことはありますか?
高峰:マイナスですね。何もおっしゃらないし、教えてもくれないし。だから役者もそこで止まっちゃって上手くなりません。ただ、仕事はラクでしたよ。勝手に演っていればよかったから。私のような怠けものには最高の演出家でした。


◆以下は、9月1日に続きます。