かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

「戦争体験を後の世代に伝えるために」(黒木和雄「私の戦争」より)

北朝鮮の「ミサイル発射訓練」(そう北朝鮮は発表している)以来、日本にもいよいよ恐れていた戦争の影が現実感をおびてきたかのようだ。テレビでも雑誌でも「先取防衛」などという言葉が飛び交っている。でも、いまここで慎重になりたい。戦争というのはサッカーや野球のゲームではなく、一度開始されてしまえば、勝ちも負けもなく、ただただとんでもなく多くの不幸を生む。それを過去の戦争について書かれた本を読むたびに考えてしまう。ぼくらは、本当に戦争の恐ろしさを知っているだろうか。先の戦争体験をもつ世代から、そのことをきちんと継承されているだろうか。

私の戦争 (岩波ジュニア新書)
黒木和雄著「私の戦争」のなかに、原爆被害者の苦しみを訴え続けたジャーナリスト大牟田氏の、「戦争体験を後の世代に伝えるために」の文が引用されている。この文をぼくは自分の心にしっかり刻んでおきたい。

被爆体験、あるいは戦争体験を聞くだけでは継承にならないということです。本来『体験は継承できない』ものなのに……。戦争体験や被爆体験を聞くことは大切ですが、それはあくまで土台なのです。その土台の上に、

  1. なぜその人は被爆、あるいは戦争体験を強いられたのか、なぜそのような時代になったのか、という『歴史を正しく学ぶこと』
  2. 被爆、あるいは戦争体験は、現在、この地上から本当に姿を消しているのか。つまり『現代を深く調べること』
  3. 被爆、あるいは戦争体験を再び生み出さぬために何か『行動(実践)すること』

この三つを積み重ねて初めて被爆体験、あるいは戦争体験が次の世代に伝えられると言えるのです。


(「世界子どもの平和像」建設委員会機関誌「せこへい」3号・1999年11月1日より)