かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

山田洋次監督『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(ビデオ)

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 [DVD]

  • 1983年、シリーズ第32作。
  • マドンナ=竹下景子


時間がしばらく経ってくると、寅さんと会いたくなります。渥美清が亡くなってから、思い出すように時をおいて、寅さんの映画を見ています。さすがにもう何度か見ているものばかりなのですが、48作品のあれやこれや、人との話題にあがると、またそれを見たくなります。

7月、息子のNと倉敷、尾道、岡山を旅行しました。最後の日、ぼくは岡山駅から帰りの岡山空港へ向かいますが、Nはそのまま旅行を続けて、京都の祇園を見てから帰る、といいます。


岡山駅で……

「これから、どこへ行くの?」
N「たぶん、高梁(たかはし)へいく。寅さんがお寺の石段で竹下景子に会うやつがあったろう。あの寺を見てくる」
「ああ、あれね。あれは、おもしろかったな」


それが頭にあったので、帰宅するとレンタル屋さんで早速借りて見たのですが、ブログにアップしそびれていました。

Nが言ったとおり、あのお寺の広い階段で寅さんと竹下景子が会うシーンが印象的ですが、この作品の舞台を詳細に案内したこんなサイトを見つけましたので、ご興味のある方はアクセスしてみてください。


寅さんは、旅の途中、備中高梁(たかはし)にある博の父の墓参りに寄る。そこで、松村達雄扮する寺の和尚と、その娘朋子(竹下景子)に出会います。

細かな筋は省略しますが、今回は寅さんがお坊さんになる、というお話でございます(笑)。

博の父の法事に寅さんが法衣をまとって参加しているが、博もさくらも気づかない。「あれっ」と気づくのは、小学生になった満男(吉岡秀隆)。

満男「あれ、寅おじさんだよ」
さくら「何バカなこといってんの」


この会話が可笑しい。本作では吉岡秀隆の満男が存在感を増してきています。

竹下景子は、寅さんシリーズに3作出演していますが、どの作品もいいですし、3作とも寅さんを好きになってくれる優しい女性なんですね。役柄が共通していないので、リリーのような強烈なインパクトはないかもしれませんが、ぼくはりりーの浅丘ルリ子の次に、この竹下景子が全シリーズを通してもっとも好きなマドンナです。寅さんとのからみがとても切ないのです。

本作でも、寅さんは朋子(竹下景子)に恋しますが、朋子も(一度結婚に失敗している)、「今度結婚するなら寅さんみたいな人がいい」と父にいってしまうほど。朋子の好意に気づいた寅さんは、またもや敵前逃亡して、柴又に帰るが、ひそかに修行して坊主になり、朋子と結婚することを決意している。そんなところへ、追いかけるようにして柴又へやってきた朋子は、切ないこころのうちを寅さんに告げようとするが……。

あとは、これから見ようとするひともいらっしゃるので、伏せておきましょう。シリーズの中でも思い出深い1作。寅さんのお坊様、マドンナの竹下景子、少し大きくなった吉岡秀隆の満男に注目の1作でございます。