シリーズ10作目。マドンナは、八千草薫。48作つくられたなかで、10作目だから、いまから見れば、まだ初期の作品といっていい。
八千草薫演じる美容師は、寅さんのむかしの同級生。同級生の気楽さから、二人のあいだに親しさが復活するが、それがいつものとおり、次第に恋に変っていく。
久しぶりに見ると、さくらもおばちゃんも、やっぱり若い。寅さんも若い。
寅さんは、旅先で同業のテキヤが急死したのを知り、自分もいつまでも旅暮らしをしていてはいけない、とおもう。
<地道な暮らし>を願う寅さんのために、とらやのひとたちは、一生懸命、嫁探しをするが、柴又周辺には、寅さんの<悪名>が知れ渡り、まともにお嫁さんのなり手はいない。
がっかりする<とらや>一同と、いじける寅さんで、またひと騒動持ち上がろうとしたところへ、寅さんの同級生<お千代>が現れる。
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作品の特色としては、寅さんと同じく、あるいは寅さん以上に<お千代>に夢中になってしまう大学助教授(米倉斉加年)が登場する。
米倉斉加年が演じる大学助教授は、徹底したインテリで、その奇人ぶりが、楽しい。
それから、寅さんがマドンナから、「私、寅ちゃんとなら一緒に暮らしてもいい」と、結婚の承諾を得るのも、はじめて見たとき、ドキッとした記憶がある。
せっかくのチャンスを、冗談として受け流してしまう寅さんのあいまいな態度が、むかし見たとき、なっとくがいかなかった。
結婚願望が、やっとのこと、しかも大好きな女性とかなうではないか、そういうときに、なぜ寅さんは、逃げてしまうのか。
結婚が成就するとシリーズが終わってしまうから、というような理由では、スッキリしない・・・。
が、いまおもえば、本作以降、寅さんは、マドンナの方から想い慕われる機会が、珍しいことではなくなってくるのだ。