しばらく前に見ましたが、なかなかアップする時間がなくて、遅くなっちゃいました。忘れないうちに書き込んでおきます。
といっても先にringoさんが感想をこちらにアップしていて、それにあまり付加えることもないのですが。
近松門左衛門の浄瑠璃が原作、といっても浄瑠璃は見たこともありませんし、近松の原作を読んだこともありません。
しかし、ringoさんも仰っているように、映画の運びが、芝居を見ているような、ある種形式の美しさを感じます。香川京子は眉をそり、お歯黒で登場、溝口健二監督はこういうこしらえが徹底しておりますね。当時のご新造さんは、こんな姿を一般的にしていたのか、よく知りませんが、香川京子に若奥さんらしい風格を醸しだす効果を与えております。
若奥さんと番頭の道行きというわけで、最初は番頭は若奥さんへ遠慮しておりますが、舟の中で、番頭(長谷川一夫)が長年の想いを告白すると、二人の気持もからだも歯止めが効かなくなります。誰も止められません。愛しくて愛しくて、二人は常時お互いのからだに触れ合い、誰はばかることもありません。
若奥さんと使用人の関係から恋人同士へ、ひとたび結ばれたあとの二人の描写があまりに濃密なので、性描写はないのに、性が男女の結びつきに果たす役割が強烈に描かれているように思いました。これは凄いですね。このあたり、密かに溝口監督が苦心したところではないか、と勝手に想像したりしています。
それにしても、いやな時代です。親兄弟のしがらみが二重三重に折り重なって、恋愛を成就しようとすると、ここまで追い込まれなくてはならないなんて……。