かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

溝口健二監督『祇園の姉妹』(1936年)

祇園の姉妹 [DVD]
BSの放送では香川京子の短い作品解説が最初につきますが、そこでは「ぎおんのきょうだい」とタイトルを読んでいたようです。「姉妹」の読みは「きょうだい」でよいのでしょうか。

古風な色街のなかで、零落した男への愛情を失わない姉梅吉(梅村蓉子 )と、男の慰み者で生きるなんてまっぴら、と逆にすべての男を憎み、近づいてくる男たちを翻弄する妹おもちゃ(山田五十鈴)の対比は、図式的すぎるとも、テーマを明確にして、色街に生きる女性の苦しみを鋭くとらえている、とも、どちらにも解釈できます。

溝口作品を二つにわけてみますと、、、

近松物語』、『雨月物語』、『新平家物語』のような映像美の素晴らしい作品では、人間描写が映像美の下に隷属し、類型(様式)を出ませんが、『祇園の姉妹』のように、色街や人間の底辺に生きる女性を描くと、みごとに生きいきとした人物が造型されます。男優も女優も、映画のはじまる10年も20年も前から色街の住民であったかのように、1つ1つリアルな演技をひきだされていて、この細部への徹底したリアリズムが、テーマの図式化を目立たなくしているかもしれません。

ただ最後に妹のおもちゃが、男への憎しみを生の言葉でぶつけますが、これは溝口作品らしくない生硬な印象を受けました。