かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

1962年にはじまった『座頭市物語』

座頭市物語 [DVD]何年か前の話ですが、ビートたけし監督の『座頭市』が上映されていたころ、池袋の新文芸座勝新太郎の「座頭市シリーズ」が日替わりで特集されていました。それで、ひさしぶりに三隅研次監督『座頭市物語』の第1回を見直しました。ビートたけし監督のあたらしい『座頭市』も見ているときは、相応にたのしみましたけど、何十年かぶりに見る『座頭市物語』は、比較にならない迫力がありました。

それ以来、もうすこし「座頭市シリーズ」を見直したい、とおもっていましたが、最近レンタル屋さんにいく機会があって、シリーズ第2弾森一生監督『続・座頭市物語』(1962年)と第3弾田中徳三監督『新・座頭市物語』(1963年)の2本を借りて見ました。

続・座頭市物語 [DVD]
座頭市は、目がみえなくて、博打うちで、居合いの達人……要するに社会に不要なアウトサイダーであります。

この主役のキャラクターの造型が、作品の95%の魅力。座頭市が差別され、やっかいもののように扱われるシーンがしばしば登場します。彼がくやしさに耐え、やがて必殺の居合い斬りで仇をうつと、ぼくらもすっとします。「座頭市シリーズ」は、この構造の繰り返しですけど、何度見ても痛快です。

改めて、勝新太郎座頭市の役づくりはすごい。勝新の名演があって、先を読めてしまうストーリーをシラけずに見ることができるのだとおもいました。もっとも、こんなことはいまさらいうまでもないことでしょうが。

女性に惚れられながら、「こんなメ●ラの博打うちを相手になさっちゃあ幸せにはなれません」といって去っていく座頭市のさびしい姿は、ぼくらの心を撃ちます。寅さんの「別れのシーン」とも共通します。

俺たちに明日はない [DVD]
第1回の『座頭市物語』がはじまったのは、なんと1962年のむかし。ということは、ビートルズが日本へはいってくる1964年より、さらに前ですよ(笑)。

やがてアメリカでもニュー・シネマが盛んになって、アーサー・ペン監督『俺たちには明日はない』(1967年)やジョージ・ロイ・ヒル監督『明日に向って撃て』(1970年)の、世の中をはみだしたニュー・ヒーローが活躍しますが、座頭市はその先駆けとなるアウトサイダーだったかもしれません。