かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬巳喜男監督『妻』(1953年)

『めし』、『夫婦』などと同じく夫婦(結婚してから10年くらい)の倦怠期を描いた作品。夫役は『めし』と同じく上原謙ですが、妻役は高峰三枝子。挙動に品のない女性を高峰三枝子が演じています。

この種の夫婦ものと同じく、映画のスタートから、夫婦のあいだにこぜりあいが続きます。特色としては、たいてい女性に甘く、男性に点数が辛い成瀬巳喜男ですけど、今回は妻の側にも夫にうとまれる原因があることをかなりハッキリえがいています。

夫に好きな女性ができて、夫婦の危機が本格化しますが、結局夫の恋人が身をひくことによって、解決もないまま、とりあえずの破局は回避します。

パトロンのいる若い女性、妻に逃げられた男など、いくつかの男と女の関係性が重層的にえがかれて、「男と女って一体なんだろう」というテーマがゆるやかに追及されている作品です。

ただ『めし』ほど、倦怠期の鋭い描写は希薄ですし、夫婦を戯画化したにしては『驟雨』ほどの熟成した可笑しさは出ていません。

成瀬作品としては「中」くらいのできではないでしょうか。夫役の上原謙は、二枚目俳優ですが、平凡な家庭の夫役もサマになりますね。

【注】:ringoさんのブログにもっと詳細な感想があります。