会社がまもなく本郷から堀切へ引っ越すことになった。一気に東京の真中から郊外への移転だ。いまのうちに、もう少し本郷を歩いてみようとおもう。
13時50分からギンレイホールで映画を見るまでに、1時間ちょっとの時間があった。それで本郷を散歩する。
本郷通りを秋葉原方面から歩いて、本郷3丁目の交差点を過ぎ、すぐに左に伸びている菊坂を下る。
「まるや肉店」の店頭でコロッケがうまそうだったので、買う。ソースをつけて、その場で食べた。あったかいコロッケがうまい。
菊坂の途中にある短い階段を左に下りると、さらに短い路地がある。そこに樋口一葉の旧居と、一葉が使っていたという井戸があった。一葉の小説は、10代のころ読んだままなので、ほとんど作品が頭の中にはいっていないのが残念。
★樋口一葉が使っていた井戸
一葉の井戸を探しているときに、思いがけぬものを発見した。映画『晩菊』(成瀬巳喜男監督)の案内板だ。
「菊坂が舞台の女たちのユーモラスな日常の話 この階段も登場する」と案内版にある。「の」を多用した、読みにくい文章だったが、思いがけない発見に、ひとり喜んだ。
このあたりは、さらに狭い路地に通じている。一帯が、路地ばかりなのだ。
「菊水湯」という銭湯の前の道をはいって、石垣の突き当りを左に折れると、鐙坂(あぶみざか)がある。短い上り坂だ。上ったところに、「金田一京助・春彦旧居跡」の案内板があった。
そこを右折。狭い路地ばかりで、散歩者にはもってこいの道だった。そこからまもなく広い白山通りに出る。
富坂を歩いていると、もう映画までの時間がなくなってきたので、あわてて1区間だったが、後楽園から飯田橋まで、地下鉄南北線に乗って、ギリギリ、ギンレイホールへ間に合った。
映画は2本。ティエリー・クリファ監督『輝ける女たち』(フランス)とトッド・フィールド監督『リトル・チルドレン』(アメリカ)。