かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

佐藤忠男『映画の中の東京』(平凡社ライブラリー)

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タイトル通り、映画に描かれた東京をさまざまな角度から検証している。佐藤忠男は、独学で、映画を学んだひと。理に走る映画評論家ではないので、文章は読みやすい。1988年7月に講談社から発売されたものを加筆・訂正したものだという。解説を川本三郎が書いている。


以下本の構成……。

  • 第1章 東京の顔……映画監督と東京
    1. 心のふるさと下町(小津安二郎
    2. 雑踏する盛り場の魅力(黒澤明
    3. 路地裏に生きる人々(成瀬巳喜男
  • 第2章 江戸から東京へ……時代と東京
    1. 江戸町人の暮らしと心意気
    2. 新派の東京(明治の時代精神
    3. 瓦礫の東京(焼け跡からの出発)
  • 第3章 山の手と下町……東京の都市構造と性格
  • 第4章 盛り場の変遷……浅草・銀座・新宿
    1. 日本で最初のモダン都市(浅草)
    2. スマートな企業の応接間(銀座)
    3. 七〇年代若者文化の拠点(新宿)
  • 第5章 アジア的大都市TOKYO……外国映画の中の東京
  • 第6章 映画の東京名所
  • 第7章 出会いと感激の都……私と映画と東京都と


川本三郎氏の「東京論」が、東京生まれのひとの視線で書かれているのに対して、佐藤忠男氏は、地方から東京に憧れて上京した少年の目で書いている。労作、といっていい。1冊のなかに、無声映画から現代の作品まで、膨大な量の映画が引用されている。

私は日本映画についての知識の豊富なことについては有数のひとりだと自負しているから、どんな映画のどんなところにどんな東京が描かれていたかということは、たくさん記憶しているつもりである(もっとも細部になると遠い記憶はあやしくなるのだが)。


(「はじめに」から)


本書を読むと、自慢ではなく、事実だとなっとくしてしまう。